(2022/10/19 05:00)
英国金融市場の混乱を招いた同国の大規模減税策は、財政健全化の重要性をあらためて示した。財源の裏付けがない年450億ポンド(約7・6兆円)の減税策を市場は警戒し、ポンドと英国債が急落。トラス英首相は減税策の大部分を撤回し、退任圧力さえ強まる。翻って日本。財政健全化目標は後退し、総合経済対策も金額ありきに傾きかねない。編成する補正予算は国債発行を伴うだけに、必要な歳出を積み重ねる財政規律を日本政府は順守してもらいたい。
9月6日に就任したトラス首相の喫緊の課題は、高い物価上昇率の抑制と経済の浮揚だ。欧州によるロシア産化石燃料の輸入制限と、ロシアによる欧州への天然ガスの供給削減、さらに英国の欧州連合(EU)離脱に伴う移民制限による人手不足が人件費の上昇圧力を高め、物価も押し上げていた。英国の8月の消費者物価指数は前年同月比9・9%上昇と、伸び率は40年ぶりの高水準に達する。
トラス政権は法人税率引き上げの凍結や、所得税基準税率の2023年4月からの1%引き下げなどを打ち出したが、市場は財源が不透明な減税策ではむしろインフレが進行し、政府債務残高が膨張すると受け止めた。これら減税策の撤回により金融市場はようやく回復したが、課題への対策は振り出しに戻る。英国経済の今後が懸念される。日本政府はこの事例を教訓に、財政健全化に配慮した予算編成に臨んでもらいたい。
総合経済対策の裏付けとなる22年度第2次補正予算案について、自民党内には30兆円規模を求める声がある。23年度当初予算の概算要求も110兆円規模に達し、歳出圧力は強まるばかり。ウクライナ情勢や東アジアの安全保障を勘案すれば防衛費増額はやむを得ず、円安・物価高対策も急ぎたいが、金額ありきの編成は慎みたい。
25年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化する目標も「25年度」の期限が消えて後退している。財政運営の信認低下を防ぐ上で、財政規律の順守と同時に新たな健全化目標も明確に示すことが政府には求められる。
(2022/10/19 05:00)
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