産業春秋/敵基地攻撃能力と専守防衛

(2022/11/29 05:00)

太平洋戦争で俘虜(ふりょ=捕虜)を体験した作家の大岡昇平は著書『戦争』で警告する。「戦争というのはいつでも、なかなかきそうな気はしない。人間は心情的には常に平和的だから。しかし国家は心情で動いているのではない。(中略)権力はいつも忍び足でやってくる」。

2022年は安全保障の歴史的転換点となる。ロシアのウクライナ侵攻や頻発する北朝鮮のミサイル発射、台湾情勢の緊迫化など潮目となる出来事が相次ぐ。小欄で「戦後」と書く時、言葉の意味が薄れかけていると感じた。

政府は敵のミサイル発射拠点などを反撃する「敵基地攻撃能力」の保有について検討を開始。安保関連3文書の年内改定を目指す。防衛費増額分は国債発行に頼らず増税などの安定財源で賄う案が浮上する。

専守防衛の範囲内で何を基準に相手国が発射に「着手」したと認定し、攻撃対象をどこまで広げるのか。国会の関与は。着手前に敵基地を攻撃すれば国際法違反の先制攻撃と見なされ交戦状態となる恐れも。

平和が経済大国の礎なのは言うまでもない。丁寧で国民的な議論に加え、岸田文雄首相のたゆまぬ外交努力が安全保障の前提として不可欠だ。忍び足には耳をそばだてたい。

(2022/11/29 05:00)

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