(2022/12/2 05:00)
財務省が1日発表した7―9月期の法人企業統計調査によると、同期末の内部留保(利益剰余金)が前年同期末比で11%増の530兆円と大幅に増え、過去最高を更新した。自己資本比率の向上につながり、経営安定化の観点では前進と言える。ただ全産業(金融・保険業を除く)の経常利益が前年同期比18・3%増と堅調だった一方、懸案の人件費は同1・3%増の微増にとどまった。業績が堅調な企業による賃上げが求められる。
7―9月期の企業業績は総じて堅調だったものの、エネルギー・原材料価格の高騰や円安の影響度合いで明暗を分けた。経常利益は製造業が前年同期比35・4%増と大幅改善した半面、非製造業は同5・6%増にとどまる。季節調整値では非製造業は前期(4―6月期)比13・3%減と減少に転じ、製造業は同6・9%増と増えている。
製造業の間でも業種によって明暗が分かれ、自動車などの輸送用機械は同2・7倍、電気機械は同73・4%増と好調だった半面、石油・石炭は同41・8%減、化学は同3・8%減と減益を余儀なくされた。半導体などの供給網の制約が緩和され、円安も追い風にできた輸出主導型企業と、円安による輸入物価の上昇が業績を圧迫した内需主導型企業の業績格差があらためて示された。業績堅調な企業は積極的に賃上げに動き、インフレ下での消費を下支えしたい。
円安下では、海外に資産を持つ企業や輸出主導型企業などの内部留保は拡大しやすい。内部留保は将来の設備投資のための蓄積であったり、業績悪化や自然災害などの不測の事態に備える重要な役割も担う。ただ7―9月期の全産業の設備投資が前年同期比9・8%増と意欲的だった一方で、人件費が同1・3%増にとどまったのは残念だ。
消費者物価指数は10月に前年同月比で3・6%も上昇した。連合は2023年春闘で5%程度の賃上げ要求方針を決め、経団連の十倉雅和会長も「物価の動向を最も重視して検討するべきだ」と応える。好業績企業の賃上げを起点に、経済の好循環を早期に回す必要がある。
(2022/12/2 05:00)
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