(2023/4/3 05:00)
こども家庭庁が4月1日に発足した。複数の省庁に分散していた子ども政策を集約した「司令塔」の役割に期待したい。430人体制で、他省庁からの移管約200人のほか民間や地方自治体からも登用した。こども家庭庁は子どもや若者の意見も政策に反映するとしており、民間からの政策提案を積極的に採り入れてもらいたい。省庁再編の組織論に終わらせず、子どもや子育て世帯の目線で統合効果を最大限に引き出してほしい。
こども家庭庁は文部科学省、厚生労働省、内閣府、警察庁などが所管していた子ども行政を一元化しており、縦割り行政是正の効果が期待される。中でも厚労省から子ども行政を移管した意義は大きい。厚労省は医療、介護、年金などの重要案件を抱え、少子化対策より優先順位は上位とみられる。高齢化で増え続ける社会保障関係費の増額には圧力が強く、少子化対策の予算の捻出が難しいためだ。
ただ、こども家庭庁がどこまで司令塔の役割を担えるか不透明感も残る。保育所や認定こども園はこども家庭庁に移管されたが、幼稚園は文科省の反発で移管されず「幼保一元化」は見送られた。また、こども家庭庁は他省庁に施策の改善を求める「勧告権」が付与されたものの強制力はない。縦割り行政の弊害が一部残ったのは残念だ。
岸田文雄首相が掲げる子ども・子育て予算倍増も、肝心の財源のめどが付いていない。多子世帯への児童手当の加算額次第では兆円単位との試算もある。首相は消費増税を否定しており、財源確保は容易ではない。政府が先週末に発表した少子化対策のたたき台も、財源不足を理由に実施を見送る対策が出てくる可能性も否定できない。
そもそも少子化対策は子育て世帯への経済的支援だけでは解決しない。非正規雇用の正規化などにより、若者の将来不安を拭い、女性も子育てと仕事を両立し、キャリア形成が不利にならない環境を整備することが欠かせない。こども家庭庁だけでは完結できず、他省庁とも連携しつつ、民間の声にも耳を傾けて最適解を見いだしたい。
(2023/4/3 05:00)