社説/G7科学技術相会合 研究のオープン化と保護両立を

(2023/5/11 05:00)

先進7カ国(G7)科学技術大臣会合が12―14日の日程で仙台市で開かれる。科学研究のオープン化・国際化を推進する意義を確認する一方、オープンサイエンスが不当に軍事転用されている現状に懸念を表明する見通しだ。名指しは避けるとみられるが、中国を念頭に置く。研究成果を各国が公正・健全に共有できる環境を整えつつ、重要な先端技術をいかに保護するかが課題となる。「信頼できる科学研究」を実現するための枠組みづくりが期待される。

G7は科学研究の自由と包摂性を尊重し、オープンサイエンスを推進することを確認する見通しだ。ただ中国は海外技術を軍事目的に不当に流用しているとされ、東アジアの安全保障上の脅威となっている。中国は世界から優秀な研究者を招く「千人計画」を2008年に着手したほか、17年には国民・企業が中国の情報収集に協力することが義務付けられた。軍事転用も視野に、先端技術の導入を急いでいる現状に留意したい。

中国が海外の研究者に資金供与し、影響力を行使していないか、研究資金の出どころを確認できる仕組みづくりなども議論を深めてもらいたい。

G7は4月の貿易相会合で、軍事転用可能な先端半導体などの輸出管理を厳格化することを確認した。モノの輸出に加えて科学研究の分野でも、不当な流用を排除するルールを模索し、G7以外の国・地域とも広く連携することが求められる。

今回のG7会合では、地球温暖化の影響を最も受けやすいとされる北極・南極での海洋観測の強化も議論する見通しだ。各国が観測データを共有し、調査の精度が向上することが期待される。地球規模の課題解決への歩みを進めてもらいたい。

ただ北極には原油や天然ガス、レアメタル(希少金属)などが埋蔵されているとされ、中国は北極海への進出を進め、ロシアは軍事的に北極海を重視している。北極は地政学的な緊張が高まっており、海洋観測に影響を及ぼしかねない状況にある。G7は中ロ抑止に向け、強い懸念を表明してもらいたい。

(2023/5/11 05:00)

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