(2023/6/1 05:00)
長野県に本店を置く八十二銀行(長野市)と長野銀行(松本市)が1日に経営統合する。八十二銀行が長野銀行を完全子会社化し、2025年度をめどに合併する。人口減と低金利を背景に、経営基盤の強化に取り組むものと評価したい。長野県の地方銀行は最終的に1行となり、「1県1行」体制がどこまで全国に広がるかも今後の焦点になる。再編により経営基盤が強化される地銀には、地元中小企業の資金繰りや地域経済の活性化への貢献が期待される。
独占禁止法の特例法が20年11月に施行され、同一県内の地銀合併が寡占禁止規定から除外されている。30年11月までの時限措置で、青森県に本店を置く青森銀行とみちのく銀行はこの特例法により22年4月に経営統合し、25年1月に合併することが決まっている。今回の八十二銀行と長野銀行による再編は特例法適用の全国2例目となる。
政府は合併・再編に伴うシステム統合・店舗統廃合などの費用に対し、26年3月まで補助金を交付する措置も講じている。政府に背中を押され、地銀再編が相次いでいる。ただ、それでも多くの都道府県には複数の地銀が存在する。「1県1行」まで再編が進む局面変化となるのか今後の動向を注視したい。
金融庁の「金融仲介の改善に向けた検討会議」が18年にまとめた報告書には、地銀が直面する厳しい経営環境が示された。地銀1行なら存続可能な都道府県は13、1行単独でも不採算の都道府県は23を数えていた。日銀の異次元緩和は金融機関の収益を圧迫し、人口減が地域経済を疲弊させている。一方で地銀はデジタル化や脱炭素などの急激な環境変化にも対応する必要があり、経営基盤を早期に強化することが求められる。
地銀は中小企業の多様な資金需要に応えたい。経営者保証や不動産担保に依存しない事業成長担保権(仮称)実現に向けた法案が23年度中に国会に提出される。事業の将来性などに担保権を設定できる制度で、合併で与信力が高まった地銀はこれまで以上に中小企業に寄り添い、資金繰りを支えてもらいたい。
(2023/6/1 05:00)
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