社説/リスキリングで雇用流動化 成長投資加速し選ばれる企業に

(2023/6/6 05:00)

少子化に歯止めをかけるには若者・子育て世代の将来不安を払拭し、所得を向上させることが欠かせない。政府はリスキリング(学び直し)により若者の能力を引き上げ、所得の高い成長分野への転職(労働移動)を促すことを少子化対策の一つに掲げる。競争力のない企業から人材が流出することを意味し、中でも中小企業は高付加価値化を追求することで労働市場で選ばれる企業を目指したい。

政府がまとめた「こども未来戦略方針」の素案によると、政府は少子化対策として“三位一体”の労働市場改革を推進する。①リスキリングによる能力向上②企業の実態に応じた職務給の導入③成長分野への労働移動の円滑化―の三つの施策を一体で取り組み、物価高に打ち勝つ構造的な賃上げを実現するという。成果主義に近い職務級で若者のモチベーションを高める一方、リスキリングを通じた成長分野への転職により所得向上を図ろうというものだ。非正規従業員の正規化を促したい。

デジタル変革(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)など成長分野への労働移動を進めることで所得を底上げし、分厚い中間層を形成することが求められる。政府は中でもGXについて、2023年から10年間で官民150兆円の投資が必要とみており、成長戦略を推し進めつつ少子化に歯止めをかける効果に期待したい。

リスキリングにより労働移動が活発化すると、スキルを向上した従業員が他社に流れるリスクが想定される。企業がリスキリングを怠る理由にもなりかねず、政府は教育訓練給付の補助率引き上げなどを検討する。企業負担を軽減することで、従業員がリスキリングを受けられる機会を現状以上に増やしたい。

中小企業はイノベーションを加速し、持続的な賃上げが可能な企業に再生し、人材を確保することが求められる。23年版中小企業白書では、競争他社が提供できない価値創出の重要性を訴えている。製品・サービスの高付加価値化は人材のつなぎ留めと同時に、価格転嫁力を高める効果も期待できるはずだ。

(2023/6/6 05:00)

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