産業春秋／官民あげてAI人材育成を

岸田文雄首相は月内に取りまとめる経済対策に、人工知能（ＡＩ）の基盤技術の開発強化や、中小企業や医療分野での普及を盛り込むと表明した。さまざまな分野でイノベーションが加速することに期待するが、肝心の人材育成を推進する政策も強く打ち出してほしい。

ＡＩの発展にはＩＴ人材が欠かせないが現状はどうか。“２０２５年の崖”に企業が対応する中で、システム開発・更新の現場では超過勤務でキツい、その割に待遇が良くないという話がそこかしこ。

売り手市場にあって、働き方改革を求められる仕事を志す人はどれだけいるのか。対策としては経験者を外から連れてくるのが手っ取り早いが、そこで実現するのは定常業務の効率化まで。

実際に転職したＩＴ責任者は、新たなビジネスを生み出すには５年はかかるという。企業の強みや業務の仕組みを理解し、社内外にネットワークを築くことが必要となるからだ。

今後、あらゆる産業にＡＩが入ってくる。労働環境の改善で学生を呼び込むとともに、リスキリング（学び直し）による社内での技術者育成が不可欠となる。政府も企業も人材育成に正面から取り組む。急がば回れでイノベーションの芽を育てたい。