障がい者枠設けず雇用、多様性は当たり前 川村義肢、工夫凝らし“現場力”高める

(2023/11/1 12:00)

義手や義足、身体の機能を補う装具を手がける川村義肢(大阪府大東市、川村慶社長)は、事業の性格上、以前から障がい者を積極的に雇用してきた。期せずしてダイバーシティー&インクルージョン(D&I、多様性と包摂性)の先進企業だったことになる。障がい者と健常者が共に働くことが当たり前の環境にあって、川村社長は「障がい者は他の障がい者に手厳しいことがある」「配慮のし過ぎには気を付けた方が良い」といった気付きを得てきた。

  • 多くの製品が手作業で作られている

現在、川村義肢で働く障がい者は全従業員の5―6%を占めている。グループ会社も同様で多い場合は10%弱。厚生労働省は障がい者の法定雇用率を引き上げ、2026年度中に2・7%を目指しているが、既に大きく上回っている。

もっとも同社では、障がい者雇用枠を設けていない。あくまで健常者と同条件で雇用している。一方で「仕事の仕分けをきちんとする」(川村社長)などの工夫は欠かさない。

例えば、はかりに同じ部品を複数置いて重さを量り、部品の数を合わせる作業がある。知的障がいのある人でも間違えないように、はかりが特定の重さを指す指針の位置だけが目に入るよう、それ以外の目盛り部分をテープで覆い隠した。

上皿には升目を描き、そこに置かなければならない個数が直感的に分かるようにした。こうした工夫は健常者にも役に立つ。「気付いたときこそ“現場力”がぐっと高まる」と川村社長は強調する。

  • 義手や義足などを製造する

各人の特性に応じた工夫をし、得意な仕事を割り振ることで健常者より熟達した障がい者もいる。約20年前に入社した知的障がいの女性従業員もその一人で、「彼女が病気で休むとラインが止まってしまう」(同)ほど今では重要な戦力だ。

特定の障がい者の要求や言い分をむやみに受け入れることはしない。自己主張をしない人、放っておいてほしいという人もいる中、誰かに配慮し過ぎると組織に偏りが生じる。「本人のためにもならない」と川村社長は強調する。代わりに上司と部下、経営層と現場の対話を重んじる方針を貫き、風通しの良さを保ってきた。

「トップダウンは嫌いだ。誰しも自分で考えて行動しないと面白くない」という川村社長の言葉は、多様性が当たり前の社風を色濃く反映している。

(2023/11/1 12:00)

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