(2023/11/8 12:00)
幸か不幸か、サプライチェーン(供給網)という専門用語が日常生活に定着して久しい。そしてその意味するところについても共通理解が定着してきたように見える。国際分業をモノづくり・モノはこびの各分野で担う実務家にとっても同様だ。マクロ外部環境が頻繁に変化することが常となりつつある昨今、ある種の共通言語=標準語を用いたコミュニケーションの重要性が増している状況といえるだろう。「世界標準のサプライチェーン・マネジメント(SCM)」という考え方について考察してみたい。
SCMの世界における世界標準が確立された時期は案外古く、源流は1950年代にさかのぼると見る説が有力だ。意外に思われるかもしれないが、その原型はモノづくりの世界で生まれた資材所要量計画(MRP)の考え方にさかのぼる。MRPは原材料の在庫・生産設備の能力・労働力といった生産に用いることのできるリソースの有限性を前提として供給の優先順位を決める活動の一種だ。米IBMのジョセフ・オリッキーが基礎理論を確立したこの仕組みが世界中の工場の活動を生産性の高いものへと変容させたことは周知の事実だ。しかし、SCMの文脈においてより重要なのはMRPの根底にある「有限なリソース=キャパシティーを前提として供給活動の優先順位について意思決定する」というコンセプトだ。
米ASCM(SCM協会)は、50年代よりこのコンセプトの普及・啓発を推進している非営利団体である。「供給優先順位」と「供給能力(キャパシティー)」の対比構造をMRPの部品レベルから製品レベル、経営資源分配レベルといった上位概念にまで適用・拡張し、体系化したことで知られる。MP&Cと名付けられたその拡張概念は、現代のビジネスを支える基幹システムの基本構造として踏襲されており、適用領域はモノづくりだけでなくモノはこびの分野にも及ぶ。
このようにSCMの世界標準はビジネスの世界におけるインフラとして社会実装されて久しい。しかし、使う側の実務家が基本コンセプトを忘却してしまえば用をなさない。継続的な実務家教育が重要である。
(2023/11/8 12:00)
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