セイコーエプソン、完全手作業工程 ロボで自動化 国内生産比率を向上

(2023/11/20 12:00)

セイコーエプソンは富士見工場(長野県富士見町)で、水平多関節(スカラ)ロボットや6軸ロボットを開発・生産する。数年前までは完全手作業だった一部機種の組み立て工程に自社製ロボットを投入し、少量多品種生産の自動化にかじを切る。生産の自動化を推進し1人当たりの作業効率を高めることで、コスト削減や省人化につなげる。事業継続計画(BCP)の観点からも分散生産を取り入れて国内生産比率の向上を目指す。

  • ボールネジスプラインの組み立て装置

セイコーエプソンのスカラロボットは、時計やプリンターの開発で培った精密加工技術を強みとする。3C市場と言われるコンピューターや携帯電話、家電の製造・組み立てで使われている。富士見工場に加え、中国・深圳、長野県の協力会社の3拠点でロボットを生産。開発・生産の中心を担う富士見工場では、多品種生産に柔軟に対応できる自動化・多能工設備の開発を進める。「魅せる工場」の役割も果たしながら、自工場で培ったノウハウを顧客への提案につなげる。

同工場では3キロ―6キログラム可搬の小型スカラロボットの組み立てに関して、2025年度中の完全自動化を目指す。従来手作業だった工程に、自社のスカラロボットや6軸ロボットを導入して、容易な工程から自動化対応を進める。MS生産技術・製造部の水永紀之部長は「道半ばでまだ手応えはないが、作業効率など徐々に効果は出てきている」と話す。将来は配線・配管作業などの高難度工程の自動化にも着手し、完全自動化を図る。

  • 自社製のスカラロボット2台と6軸ロボット2台の計4台で構成するモーターの自動組み立て装置

ロボット導入側の立場として、ロボット機能を最大限に使いこなしながら使用シーンのバリエーションを増やす。ロボットが人に替わって「セル生産」を実施するイメージだ。ロボットの背面板の組み立てには、スカラロボットや直交ロボットなどで構成したプレート組み立て装置を用いて、ネジ締めや組み付けの自動検査を実施する。ロボット自らハンドを取り換えて、高トルクのネジ締めやピック・アンド・プレースなどに対応。組み立て専用のステージと移動台車がセットで、機種を切り替える際には組み立てステージを追加するだけで良い。

またボールネジスプラインの組み立て装置には、スカラロボットと6軸ロボットを使い、ネジ締めや高精度部品の挿入、グリス塗布機能を盛り込んだ。

12月にはスカラロボットに搭載するモーターの自動組み立て装置を稼働する。スカラロボット2台と6軸ロボット2台の計4台で構成。4台のロボットが同時制御で、6種類のモーターユニットを並列して組み立てる。4台が衝突しないようにシミュレーション技術を活用しながら工夫を図る。

単純作業をロボットに置き換えれば、人は装置の操作管理やデータに基づく解析・分析などより高度な仕事に取り組める。今後の課題は装置のエラー停止などに伴う稼働率の向上だ。吉田佳史執行役員は「社内事例を蓄積し、顧客へのソリューション提案につなげたい」と語る。

(2023/11/20 12:00)

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