(2023/11/27 12:00)
9月に打ち上げられ日本初の月面着陸機として期待される小型月着陸実証機「SLIM」。着陸の誤差100メートル以内と、従来の同数キロ―十数キロメートルから大幅に精度を高めた自律的な着陸を目指す。開発担当の三菱電機は人工衛星の経験は豊富だが、静止軌道から離れる実機開発は初めて。自律的な着陸は他の天体にも応用でき、月や惑星の探査頻度向上に貢献できると挑んだ。
同社先端技術総合研究所移動体・宇宙システムグループの清水誠一主席研究員は「着陸後の移動が不要になる」と利点を話す。技術の根幹は「画像照合航法」と「自律的な航法誘導制御」。着陸直前の約20―30分間は地球から操作ができない。SLIMは高度約15キロメートルまで降下した後、カメラで月表面の撮像を行いながら水平方向に飛行する。月周回衛星「かぐや」撮像の月クレーター画像と照合し、飛行場所を特定しながら目標地点上空まで移動する。その後、高度を約7キロメートルに下げ、月面までの距離や速度を把握しながら垂直降下して軟着陸を図る。
目標地点は月の赤道に近い「シオリ」クレーター近辺で岩石がむき出しになっている。垂直降下中も高度に応じ自動で撮像し、岩など障害物を判断。直径数十センチメートル以上の対象を回避して転倒などの事故を防ぐ。垂直降下は開始すると重力の影響で中止できないため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携してさまざまなリスクを検証。「センサーやカメラの故障など約1000通りの模擬実験を複数回行い、不具合発生も姿勢制御などで対応できるようになった」(清水主席研究員)。
推進剤を含め約700キログラムと探査機としては軽量のため軌道も工夫。月の重力を利用して軌道を変更する月スイングバイを使って推進剤の消費を抑え、加速度計とジャイロセンサーの活用で位置や速度を自律的に推定する慣性航法を使用。飛行時間とともに蓄積する誤差はカメラを用いた画像照合航法と組み合わせることで解消した。同グループの北村憲司主席研究員は「加速や軌道修正のための噴射をいつどのように行うかも計算している」という。
(2023/11/27 12:00)
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