コメどころで稲作スマート化 新潟県農業大学校、通年実証で学び深める

(2023/11/27 12:00)

新潟県農業大学校は校内の水田でスマート農業技術の実証を進めている。クボタや新潟クボタ(新潟市中央区)と連携し、春から秋までの作業で専用機器を使った。信濃川が運ぶ肥沃(ひよく)な土壌や寒暖差のある広大な平野に恵まれた県内は、作付面積も収穫量も国内最大のコメどころ。少子高齢化などで担い手不足が課題になりつつある中、将来を支える生徒らにノウハウを伝える。

  • 自動運転アシスト機能で水稲を収穫する有人コンバイン(手前)と、稲わらのすき込みをする無人トラクター(奥)。コンバインに乗った1人が2台を監視する

新潟県農業大学校では2年制の稲作経営科(定員40人)の生徒が先進技術に触れる場を提供している。校内の実証用水田2万平方メートルを使い、5月から自動給水栓による水管理や飛行ロボット(ドローン)による施肥などを実施。10月には収穫と秋耕起まで行った。

使用したのは、自動運転支援機能付きの有人コンバインと無人のトラクターの2台。いずれも通信で位置情報などを把握して動くため、運転中に人の操作は不要という。コンバインに乗り込んだ作業員1人が座席に座ったまま2台を監視した。

実証では片側1万平方メートルのみを前日に稲刈りしておき、稲刈りと耕起の二つの異なる作業を同時に実施した。農業機械が動き回れる面積が1万平方メートルであれば、一度に稲6束を刈り取るコンバインを使うと収穫は約2時間で終わる。稲わらの腐熟を促すために乾いた地表を耕す秋耕起も、深さ50センチメートルほどなら約2時間で済む。

  • 稲刈り中のスマート化コンバインを見つめる生徒ら

同校の水田でスマート農業技術を通年で実証するのは2023年度が初めて。当初から実証に関わる生徒は、卒業研究の一環として学びを深めている。

スマート農業技術を導入して収益を上げるには、機器も高価なため大規模化が不可欠とされる。同校の水田も実証のために隣り合った田んぼをつなげて広くした。今後はどの程度の広さであれば最も効率が良いのかなどの前提条件についても、実証を通じて明らかにする方針だ。

新潟県産米の21年の産出額は1252億円で全国首位。県内の生産品目別でみると、コメが同年に55・2%を占める。県内はコメ加工品の製造元も多く、米菓では亀田製菓、岩塚製菓、三幸製菓(新潟市北区)、栗山米菓(同)など大手がひしめく。包装米飯最大手のサトウ食品の地盤でもある。

一方、水田の担い手の負担は増しており、省力化・効率化の必要性が高まっている。農林水産省の「2020年農林業センサス」によると、県内の1経営体当たりの経営耕地面積は20年に3万2000平方メートルとなり、10年調査比で同1万平方メートル広がっている。県内の経営耕地に占める借入面積比率も10年は36・7%だが、20年には49・9%まで伸びた。

仲山和久稲作経営科長は「農業を法人で大きく展開する場合や家族で小さくやる場合があるが、地域にとってスマート化という選択肢は必ず出てくるはず。生徒にはいろいろな可能性があると実際に見て感じてもらい、卒業後に役立ててほしい」とする。

(2023/11/27 12:00)

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