産業春秋／キッシンジャー氏、バイデン大統領批判も

２９日に１００歳で亡くなったヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が、バイデン米大統領の発言を批判したことがある。２０２２年５月のこと。日本での日米首脳会談後の会見で、バイデン大統領が言及した「台湾」問題を看過できなかったようだ。

バイデン大統領は首脳会談後の会見で、中国による台湾侵攻の際、米国が軍事介入するかを記者に問われ「イエス」と明言した。「一つの中国」政策を尊重してきた米国が「二つの中国」に言及したように映る。

キッシンジャー氏は２２年５月に開かれた世界経済フォーラムの年次総会（ダボス会議）にオンライン参加し、「台湾は（米中）交渉の中心になりえない」とバイデン大統領の発言を批判。７０年代に米中関係の正常化に貢献した同氏だけに、自制を促したような指摘だった。

バイデン大統領の発言を受け、ホワイトハウス高官は台湾をめぐる政策に変更はないと直ちに釈明。会見翌日にはバイデン大統領自身が前日と同じ質問に「ノー」と修正している。

キッシンジャー氏は米中関係のほかベトナム戦争終結や米ソの緊張緩和など重大な国際問題に関わった。失言の多さが指摘されるバイデン大統領は貴重な助言役を失った。