(2023/12/12 12:00)
電気めっき工
考える面白さ、原動力に
スズキハイテック・三沢孝夫氏
スズキハイテック(山形市)の三沢孝夫さんは入社後、当時の「技術部」に配属された。「人に教えられるような存在になっていければと思った」と駆け出しの頃を振り返る。それから39年間、今も現場でメッキ技術の向上に励んでいる。同社としては2人目の現代の名工となった。
メッキは薬液の濃度の違いなどを「自分で考えながらモノづくりができるのが面白い」という。課題を解決していくための創意工夫を繰り返してきた。その例が「鉛フリー」のスズ合金メッキの開発だ。欧州連合(EU)が2006年に施行した「RoHS指令」を背景に鉛が規制対象となり、当時使われていたスズ―鉛メッキに替わる技術が取引先などから求められた。
試行錯誤の中、従来の特性が得られるビスマスを選び出し、スズ―ビスマス合金メッキの量産化技術をいち早く確立した。「メッキ液の管理など条件を固めるのに苦労した」と話す。課題解決は「トライ&エラーの繰り返し」を強調する。
現在所属する事業開発課は、微小電気機械システム(MEMS)やバイオミメティクス(生物模倣)技術など将来に向けた柱の育成に注力している。「会社をはじめ多くの仲間が支えてくれたおかげで今がある」として、後進の成長に期待を寄せる。
指導では「自分で考えて進むことが重要」と常に呼びかける。なぜうまくできないのか。何が足りないのか。「考え抜く力を磨いてほしい」という。
NC旋盤工
“指名受注” 信頼の証
エムエス製作所・深見克彦氏
エムエス製作所(愛知県清須市)開発技術支援部技術長の深見克彦さんは「金型作製」「機械加工」の職種で特級の資格を持つ。「機械加工」「仕上げ」「金型作製」の3種目のうち計六つの作業の一級技能士でもある。
自動車のドアや窓の縁に付けて雨風の侵入を防ぐウェザーストリップ向けゴム金型の製作が主力の同社で、20年以上、金型部品の機械加工を担当。以前勤めていた会社が倒産、廃業した経験があり「自分の名前で仕事が来るように」と技術力を磨いてきた。
実際に技術力で得る仕事も増えた。海外製金型の修理は図面もない中、手作業のヤスリがけなどで仕上げる。引き受けられる技術力を持つ企業が少なく、顧客から頼られている。また、新規事業で手がける試打用ゴルフクラブのヘッド部交換用ネジ締結具の加工は、できるのが深見さんだけ。肉厚が薄く、つかみ過ぎると変形するなど繊細な作業が必要だが、汎用フライス盤を巧みに操り、穴開けとねじ切り加工を施す。
後進の指導では、数値制御(NC)機の前に「まず汎用機を経験させる」。汎用機だと加工の限界を五感で知ることができる。その結果、NC機を扱う上で効率の良い加工条件を自分で考えられるようになる。
「60歳までのあと2年は他の特級を受験する」と、止まることない背中を見せて後輩たちを鼓舞する。技能検定委員を長年続けるなど業界の後進育成にも貢献している。
(2023/12/12 12:00)
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