(2023/12/26 12:00)
有給休暇は“使わないと損”から“ためたら安心”へ―。こうした発想からトラスコ中山が2022年に導入した独自の制度が「積休(つみきゅう)バンク制度」だ。機械工具卸商社の同社が事業の根幹として重視している物流センターで、中山哲也社長が同センター長の出勤スケジュールを目にしたことが制度導入のきっかけとなった。
「人繰りが大変だ」。中山社長は飛び石連休期間中の物流センターの出勤スケジュールにこう感想を漏らした。現場での人員配置の大変さを少しでも緩和したいとの思いから、同社は従来の有休制度を改正し、22年1月に積休バンク制度の導入に踏み切った。
同制度ではパートを含む全社員を対象に、利用しなかった有休を上限なく積み立てられるようにした。同社は継続勤続年数に応じて年10―20日間、入社7年目以降は年20日間の有休を付与している。うち前期(1―6月)と後期でそれぞれ5日間の有休取得を推奨。有休を取得しやすいよう「計画有休」の登録も促している。関連法規で年5日間の有休取得が義務付けられており、入社7年目以降の社員は年最大15日間の有休を積み立てることができる。
07年に導入した従来制度「積立有休制度」は、パートを除く全社員が対象で、有休を年最大10日間積み立てることができたが、未消化の有休が60日を超えた場合は失効する形で運用していた。
また積休バンク制度では、積み立てた有休を会社が買い取る仕組みも導入した。退職時に積み立てた有休をすべて使用したり、一括買い取りを選んだりすることもできる。
社員にこうした選択を与えることで、一人ひとりのライフプランに合わせて選択肢を増やし、社員の働き方改革にもつなげている。結果として中山社長は「無理に有休を消化する必要がなくなり、管理する側も急な休みに備えて余分に人を張り付けて置く必要がなくなる。人員配置に頭を悩ますことも減るだろう」と指摘する。
一方、22年4月には休日カレンダーの変更も行った。毎月最終土曜日の出勤日をなくし、お盆と年末の長期休暇の一斉取得を廃止することで、暦通りの休日に変更。お盆や年末の休暇は各自が好きな日に取得できるようにした。事業面ではお盆や年末年始も営業所や物流センターを運営することで、顧客となる通販事業者などの利便性を向上。喜多智弥人事部部長は「ネット通販事業者からの注文が増える中、長期休暇中に当社が当日出荷に対応すれば、お客さまにも喜んでいただける」と強調した。
積休バンク制度の導入や休日の変更で有休消化率の低下を懸念したが、65%前後で大きな変化はなかった。社員からは「有休消化をめぐり従業員同士との不公平感がなくなり、物流センターで人手が確保しやすくなった」との声も聞かれた。
中山社長は「有休はもともと社員に与えられた権利。選択肢を提示することで、社員の働きがいにつながれば」とし、社員にも顧客にも寄り添う。
(2023/12/26 12:00)
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