SCMの“共通言語”、環境変化対応で専門用語辞典も進化

(2024/1/24 12:00)

サプライチェーン・マネジメント(SCM)の世界には専門用語辞典がある。編さんしているのは米国の非営利団体であるSCM協会(ASCM)だ。採録語数は約5400、1963年に刊行されてから現時点で17版を数える。日本では同団体のローカルコミュニティーであるASCM COMMUNITY JAPAN(ACJ)が対訳版を制作している。日本のSCM実務家にとってもなじみ深い辞書だ。本稿では、同書の変遷を概観し、SCMの「共通言語」について考察する。

  • ASCMのSCM用語辞典の採録語数は約5400語に増えた

同書には、伝統的に日本語由来のSCM用語が採録されている。「Jidoka(自働化)」など60語ほどが含まれる。これらは日本のモノづくりのメソドロジー(方法論)がSCMの世界に大きく貢献してきたことを示す証左といえるだろう。もっとも、その多くはモノづくりの「実行と管理」に関する用語だ。

その一方で、ここ数回の改訂ではDDMRP(需要主導型MRP=本連載第41回)やSCOR―DSなど、外部環境変化に対応しつつSCMの効果を担保するための新しい概念に関する用語が多く追加されている。その数は500語を超える。これらは主に「計画系業務」や「戦略・設計業務」に関するものだ。

専門職としてのSCMの中核は、モノはこびとモノづくりからなるサプライチェーン(供給網)の現場=実行系業務の効果を保証するための意思決定だ。その知見は体系化され、SCM実務家の基礎教養であると同時に共通言語となっている。新たな概念を取り込み、標準を更新する議論もこの共通言語を用いて行われる。

ASCMの辞書は毎回改訂時に新語を募集しているが、近年追加された日本語由来の用語はわずかに1語だ。日本のモノづくりのメソドロジーが未来へ向かっての話題にあまり登場しないことと無関係ではないだろう。共通言語を使いこなし、日本ならではの価値を発信する。SCMのグローバルなコミュニティーに貢献するマインドがSCM実務家に期待されるのである。

◇著者:MTIプロジェクト 『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞)』の著者である山本圭一・水谷禎志・行本顕の3氏によって創設された世界標準のSCM普及推進プロジェクト。MTIは「水山行」のラテン語の頭文字。本連載はメンバーのうちASCMのSCMインストラクター資格を持つ行本顕が執筆を担当

(2024/1/24 12:00)

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