社説/「もしトラ」の現実味 問われる民主主義、行方に懸念

(2024/2/7 05:00)

「もしトラ」。もしトランプ氏が米大統領に返り咲いたら、の意味で使われる。共和党の大統領候補者を選ぶ予備選ではトランプ氏の優勢が続き、バイデン大統領との決選でもトランプ氏優位の米世論調査が相次ぐ。「もしトラ」は世界の分断をさらに深め、世界の権威主義的なリーダーがこれを歓迎する。保護主義への傾斜は日本企業にも多大な影響を及ぼす。予測不能なトランプ氏の言動を警戒しつつ、注視する必要がある。

トランプ氏は共和党予備選を優位に進め、同党の大統領候補になるのが確実視される。バイデン大統領を上回る支持率から「もしトラ」も現実味を帯び始めたように映る。バイデン大統領にとって堅調な米国経済は追い風だが、物価の高止まりや自身の高齢、親イラン武装組織との高まる緊張、イスラエルを支持するバイデン政権への批判もトランプ氏優位の背景にある。

ビジネス感覚のディール外交を展開するトランプ氏が大統領になった場合、米国のウクライナ支援が大幅削減され、ウクライナが領土の一部を奪われたまま終戦となりかねない。武力による現状変更がまかり通れば、中国の台湾統一を勢い付かせる。トランプ氏は「台湾に半導体産業を奪われた」とも語る。米国の台湾への関与が弱まり、日本に防衛費増額を迫る可能性があることにも留意したい。

トランプ氏は現政権よりイスラエルを支持するとされ、中東情勢のさらなる悪化も想定しておく必要がある。バイデン政権で復帰したパリ協定(気候変動問題に関する国際的枠組み)から再離脱する可能性もある。同氏をめぐる懸念は尽きない。

米中は2023年11月の首脳会談で、意思疎通を継続することで一致した。だがトランプ氏は再選後、中国に60%超の関税を課すことを検討しており、半歩前進した米中関係が再び冷え込めば日本にも影響が及ぶ。

11月5日の大統領選投票日まで9カ月。民主主義と国際秩序を重視するバイデン氏と、自国第一・保護主義のトランプ氏いずれを有権者は選択するのか、民主主義の真価が問われる。

(2024/2/7 05:00)

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