(2024/3/5 17:00)
和歌山県内は9日昼に予定するスペースワン(東京都港区、豊田正和社長)の小型ロケット「カイロス」打ち上げに向け、盛り上がりを見せている。4度の繰り延べを経て、満を持して迎える初号機発射に、関係者は興奮を隠しきれない。新たな観光資源や宇宙産業の立地と、成功の先に夢見る地域の将来像に期待が高まる。当日は県内各所で多くの人が、カウントダウンを見守ることになる。
2024年始め、県内経済団体の新年会は笑顔であふれていた。「年度内には打ち上がるだろう」などと、まことしやかに噂されていたのも、明るさの要因の一つ。和歌山にとってロケット打ち上げは地域浮揚の好材料。まさしくカイロスが意味するチャンスの神そのものだ。
1月開いた県の成長産業開拓ビジョン検討会で、スペースワンの遠藤守取締役は「宇宙をキーワードに、産業振興の役に立てるのではないか」と発言。ロケット燃料の高性能化や森林の活用可能性を示し、宇宙関連人材やスタートアップの育成で連携を提案した。
串本町のロケット射場「スペースポート紀伊」周辺に設ける見学場2カ所のチケット計5000枚は発売から2日で完売。打ち上げ日公表から4日後には岸本周平知事が「現地のホテルが全部埋まっている」と明かした。
地域にとって最大の不安は、打ち上げ見学客による交通渋滞の発生だ。紀伊半島で海岸線を沿って走る国道42号は唯一の生活道路。警察など地元関係機関は渋滞回避への準備を数年かけ、念入りに進めてきた。当日は駐停車禁止区間を設け、併走するJR紀勢線では臨時列車を運行する。
県はチケットを入手できなかった見学希望者に、現地を訪れず、ウェブ配信を視聴してほしいと呼びかける。県内の商業施設や高速道路の休憩施設など民間事業者が協力するサテライト会場では、打ち上げ前後に宇宙関連イベントも開かれる。
1日の報道向け説明会で、スペースワンの豊田社長は「地域の皆さんに、いくらでも待つから成功してくださいと声をかけられ元気づけられた」と地元への謝意を示した。東京大学大学院の中須賀真一教授は、打ち上げ時は衛星技術者が2週間程度滞在すると話し、日本の民間として初参入する衛星打ち上げ市場で「和歌山の豊富な観光資源は国際競争力となる」と指摘した。
2月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた「H3」ロケットの成功に続くことができるか。宇宙開発が“官から民へ”の第一歩を記す瞬間を地元は期待を胸に、固唾(かたず)をのんで待つ。
(2024/3/5 17:00)
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