(2024/3/8 12:00)
子どもの頃から読書が楽しみだった。小学生の時はSFやミステリー、中学と高校時代は文学作品、大学時代は建築や都市計画に関する専門書をたくさん読んだ。分野や作家を特定せず、その時々に好きな本を読むことが多い。同じ内容であっても読んだ時期や外部環境、社会情勢などに応じていろいろな感想を持ちうることを実感している。
その一つが、高校か大学の時に読んだカミュ著『ペスト』だ。コロナ禍の2020年に話題となり、再読した。70年以上前の著作でありながら、ペストの流行による街のロックダウンなどコロナ禍での経験と似た状況がリアルに描かれている。ペストのような伝染病に限らず、世界には依然さまざまな制約や決まり事が存在しており、隠喩として現代社会に通じるところがある。
翌年の社長就任を要請されたのもちょうどその頃。先行きの不透明さが増し不安感が募る中、誠実であることの重要性を説く主人公の言動に大きな勇気をもらった。
福岡伸一著『生物と無生物のあいだ』も印象深い。福岡氏が提唱する「動的平衡」は、人間の身体を構成する細胞は常に新しいものと入れ替わっていくという考え方。これは会社組織にも相通ずる。実際、日建設計は創業120年以上の歴史の中で、従業員が次々に入れ替わり規模を拡大しながらも会社としてのアイデンティティーを維持してきた。
イタリア人の物理学者、カルロ・ロヴェッリ著『世界は「関係」でできている?美しくも過激な量子論』は、モノではなく関係だけが世界を造っているということを科学的な側面から解説している。いろんな関係性の上に物事が成り立っていることを意識していた数年前に出会った。
今でも書店や図書館に行き、目にとまった本を手に取る。移動時や就寝前など読むタイミングは限られるものの、宇宙や量子に対する興味は尽きず、これからも最先端の知識を吸収したいと考えている。
(2024/3/8 12:00)
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