(2024/3/8 12:00)
ウラノ(埼玉県上里町、小林正伸社長)は、チタンやインコネルといった難削材を使った加工を強みとする。群馬、埼玉、長崎県に工場を構え、航空機と半導体製造装置向け部品を2本柱とする。足元では特に航空機事業が好調で、米ボーイング社の旅客機向けの受注規模では国内でも屈指という。さらに金属加工のみならず航空機エンジン部品の組み立て事業にも乗り出し、持続的な成長を目指している。
ウラノは農業機械や自動車部品を手がける鉄工所として1963年に設立した。転機となったのは89年の埼玉第3工場(埼玉県上里町)完成に合わせ、当時としては高額だった5軸マシニングセンターを5台導入したことだ。精密加工が可能となり、複雑な形状をした部品の加工を求める声が集まるようになった。
そこから顧客の幅が広がり、航空機分野への参入を果たした。当初は機体部品を手がけていたが「次第にコストダウン競争が過熱していった」と小林社長は振り返る。そこで品質の要求水準が高く、価格競争に巻き込まれにくいエンジン部品の製造へと徐々にシフト。技術力を高めていった。欧エアバスの「A350」向けのエンジン部品などを製造し、実績を積み上げ顧客からの信頼を獲得した。
2019年に稼働した群馬工場(群馬県伊勢崎市)でもエンジン部品を中心に製造。最新鋭の設備を複数導入し、少人数で多くの部品を生産する効率の高さが特徴だ。
20年春以降は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け航空機分野の需要が減少したが、半導体製造装置向け部品でカバーした。そして航空機部品がコロナ禍から少しずつ需要を回復した22年、長崎工場(長崎県東彼杵町)で稼働した5棟目の新工場で新たなチャレンジを始めた。
米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製エンジン「PW1100G」部品の量産、組み立て事業だ。製造するのは、ジェットエンジン内部の空気の流れを整える部品「ベーン」。羽根のような形状をしている。それを「リング」と呼ばれる大型部品に接着し組み立てる作業だ。
手作業による精密さが求められ重工メーカーに2人の社員を派遣し技術を習得した。「複雑工程が多くて自動化が難しく、高い技術力が求められる。他社が手を出せない分野に進出して生き残りを図る」(小林社長)と話す。
27年にはさらに難易度が高いチタン製ベーンの組み立てにも着手する計画だ。現在「150―200人乗りの小型機の市場が世界中で伸びている。これに伴い『PW1100G』向け部品のニーズも高い」と小林社長は今後に自信を見せる。
同社は28年7月期を最終年度とする5カ年の経営計画で、売上高目標150億円(現状比2・5倍)を掲げる。エンジン部品の組み立てなど挑戦の手を緩めず、達成を後押しする。
(2024/3/8 12:00)
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