(2024/3/29 05:00)
個人が自家用車で客を有料で運ぶ日本版ライドシェアが4月から段階的に始まる。タクシーが不足する地域と時間帯に運行を制限し、第1弾は東京、神奈川、愛知、京都の4都府県の一部地域で解禁される。利用者の安全確保と利便性の向上を両立できるかが焦点になる。政府は第1弾の運用状況を詳細に検証した上で、全面的な解禁に向けた議論を深めてもらいたい。
道路運送法では第2種運転免許を持たない個人が有料で客を送迎するのを原則禁止。だが政府は例外的に2006年に「自家用有償旅客運送制度」を開始している。過疎地などに限定して自家用車での有料運行を認めている。国土交通相の登録を受けた自治体やNPO法人などが対象で、2種免許は必要ない。
政府は同制度を拡充し、ライドシェアを部分的に解禁する。タクシー会社による運用管理を前提に、都市部や観光地でも個人が有料で客を送迎できるようにした。料金はタクシーと同等で、配車や車両の管理を担うタクシー会社は、ドライバーの健康チェックや定期的な運転技術指導も行い、安全第一で新たな試みに臨んでもらいたい。
政府は大阪や福岡、札幌などへも段階的に対象地域を拡大する。6月には全面解禁を判断する。タクシー会社以外の事業者がライドシェアを運営し、運用時間帯などの制限も緩和されれば市場は急拡大し、利用者の円滑な移動が消費を喚起する効果も期待できる。違法な“白タク”の排除にもつなげたい。
ただライドシェアはタクシー不足を補完するもので、タクシー会社の競合相手ではない。タクシーといかに共存するのか、政府は拙速な議論を避け、自動車運転事業の健全な市場拡大を目指したい。他方、米国や東南アジアなどでは運転手による性的暴行や窃盗などが問題視される。利用者による評価制度を設けて運転手の質を担保するなど十分な対策を講じておきたい。
ライドシェアの世界市場は24年に20兆円に迫るとの予測もある。日本も安全を最優先に、多様な移動手段の可能性を模索し「24年問題」を乗り越えたい。
(2024/3/29 05:00)
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