(2024/3/28 05:00)
路線バスは利用者の減少で経営が厳しく、賃金も全産業平均を下回る。運転手のなり手が減少する中、時間外労働に上限を設ける「2024年問題」が4月1日に迫る。収入減を理由に離職したり、運転手の確保もこれまで以上に難しくなると懸念される。路線の縮小・撤退が起きる危険性も増す。通勤や通学、通院など日々の暮らしを支える公共交通機関をいかに維持するのか、自治体と事業者の連携強化により対策を講じたい。
2023年12月、大阪府富田林市で金剛バス15路線を運行してきた金剛自動車がバス事業を廃止した。収支が悪化し、運転手の確保がままならないための苦渋の決断だった。路線バスをめぐる厳しい経営環境は、地方の過疎地にとどまらない。
路線バスは20年に独占禁止法の適用除外となった。人口減少でサービス維持が困難な路線については、経営統合や共同経営が認められるようになった。事業者の再編を後押ししたが、路線の縮小・廃止は後を絶たない。経営が改善せず、運転手不足が深刻化しているためだ。
バス事業のうち一般乗合バスの収支は赤字体質で、日本バス協会によるとコロナ禍前の10年間は年平均390億円の赤字、コロナ禍の20―22年は3年間の合計で4348億円の赤字に膨らんだ。何も対策を講じなければ、運転手は24年に2万1000人、30年には3万6000人の不足が生じるとされる。自動運転の実用化もまだ先だ。
岡山市の取り組みが興味深い。市は路線バスの効率化と利便性を両立させる「利便増進実施計画」を打ち出し、競合する9事業者で重複する路線を集約する。その上で、利用者数に応じて路線を「幹線」と「支線」に分類。利用者が比較的多い幹線は従来通りバス事業者が運営し、利用者が少ない支線は公設民営とする仕組みである。
岡山市は支線の運行経費の最大65%を国の補助を受けて負担する。支線は駅や病院にも接続するなど経路を見直し、市民の利便性も向上させる。25年度にも実施される予定で、こうした事例も参考に対策を講じたい。
(2024/3/28 05:00)
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