バッカス・バイオイノベーション、破棄物・CO2を資源化 バイオモノづくり展開

(2024/3/29 12:00)

微生物などを用いて化学品や燃料などの有用物質を生産するバイオモノづくり。廃棄物や二酸化炭素(CO2)を資源化できるモノづくりとして期待が高まる。産業基盤構築を進めるのが、神戸大学発ベンチャーで日本初「統合型バイオファウンドリ」を手がけるバッカス・バイオイノベーション(バッカス、神戸市中央区、近藤昭彦社長=神戸大副学長)だ。日揮ホールディングス(HD)との協業などでバイオモノづくり製品の早期の商業生産、社会実装実現に向けた取り組みが進む。

  • バッカス・バイオイノベーションのラボ

バイオモノづくりは目的物質を効率良く大量生産できるよう遺伝子改変した細胞「スマートセル」が重要な役割を担う。スマートセルや生産プロセスの開発を手がけるのが、受託製造業のバイオファウンドリーだ。

スマートセルを使い、1リットル程度のラボスケールで目的の物質が生産できても、事業化には工場での生産が必要だ。工場は数百立方メートルのスケールとなり、温度分布など製造装置内の状態はラボスケールとまるで異なる。既存のバイオファウンドリーはスマートセルのDBTL(設計・構築・評価・学習)と、生産プロセス開発を担う企業が分かれており、スケールアップがスムーズではなかった。バッカスはDBTLと生産プロセス開発の両方を一気通貫で“統合して”手がける、世界的にも限られた「統合型バイオファウンドリ」のリーディングカンパニーだ。

バッカスはバイオモノづくりの社会実装に向けた時間とコストを大幅に削減するため、バイオファウンドリーのサービスに磨きをかける。そのために自動化やデータ学習、人工知能(AI)の活用推進により、DBTLのサイクルを高速化する。スマートセル設計後の遺伝子合成や導入、性能評価は「人海戦術」(近藤社長)。これらでのロボットの活用をさらに高度化する。

加えて日揮HDとの連携により「スケールアップとプロセス開発の機能を飛躍的に強化する」(同)。これまで数十年必要だった微生物の開発から商業化までの期間を10分の1以下に短縮する。

両社はCO2を原料としたバイオファウンドリー構築でも協業する。カネカや島津製作所を含めた4社で協業し、水素細菌を使ったCO2からのモノづくりを研究。カネカの高砂工業所(兵庫県高砂市)で、生分解性ポリマーを2030年までに量産したい考えだ。

CO2を原料とするバイオモノづくりではCO2固定化速度が速い水素細菌の活用が進み、カーボンネガティブ社会への期待が高い。ただ水素細菌の培養にはCO2と水素、酸素の混合気体が必要で、混合比率が悪いと爆発のおそれがある。日揮HDは大型プラントにおいて安全にガスをハンドリングする技術を持っており、ノウハウを生かす。近藤社長は「バイオテクノロジー会社とエンジニアリング会社が一体となり取り組む必要がある」と説明する。

CO2からのバイオモノづくりで、工業生産の例は世界でもない。そのため同プロジェクトの成功は、日本が世界に先んじてCO2からのバイオモノづくり産業基盤を確立する上でも大きな意義を持つ。実例を示し、CO2からのバイオモノづくりの普及を促す。

(2024/3/29 12:00)

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