(2024/3/29 12:00)
読書が趣味であり、乱読タイプを自認している。推薦する一冊はカミュ著『ペスト』だ。10代の終わりに初めて手に取り、コロナ禍に再び読み返すようになった。
伝染病ペストの発生により外部と完全に遮断された都市の人々は、悪の象徴であるペストに翻弄(ほんろう)される。隔離された極限状態の中、主人公の医師は不条理な環境を受け入れながら医師としての職務を果たしていく。読んだのが自分自身の生き方や考えが固まってくる時期でもあり「自分もこんなふうに生きていくんだ」と心に響いた。何かが起こってもバタバタせずに、冷静にやるべきことをやる。こうした主人公の姿勢、実存主義は私の生き方の原点になっていると言ってもよい。
日常で目の前にあることから逃げないのは大事だ。ただ逃げないことに価値があるかといえば、総体的に大したことではないこともある。こう考えると、目の前のやるべきことはやるが、これ自体に絶対的な価値はないと分かる。
少しむなしいが、むなしさを感じるから何もしないとか、逃げるのではない。「私はここで生きるんだ」という死生論的なことが、『ペスト』を読んでから自分の中に存在し、これまで生きてきたと思う。
内村鑑三著『代表的日本人』もお薦めしたい一冊だ。日本の5人の偉人の簡単な伝記で40代に読んだ。リーダーとしてどうあるべきかを感じさせてくれる。
先日、社外のリーダー育成研修会で執行役員になりたての若い人たちにこの本を読んでもらった。誰が好きかを聞くと、自分の中にある理想と重なる人物を選ぶようで、西郷隆盛が人気だ。私も若い頃は西郷がよいと思っていたが、情が強いと組織が縮むこともあると気付いた。
現在は道徳心を持ち率先して行動する二宮尊徳に引かれ、自分のポジションよりも母親の面倒をみることを選ぶ中江藤樹もよいなと思う。人として正しい道を生き、周りの人にも正しい道を伝える姿に共感する。
(2024/3/29 12:00)
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