社説/企業変革の新年度(下)「中小」再生と「中堅」飛躍に期待

(2024/4/3 05:00)

新年度は、雇用の7割を占める「中小企業」の事業再生と、成長の伸びしろが大きい「中堅企業」の飛躍に期待したい。

政府は中小政策を見直し、資金繰り支援から事業再生支援へと支援の軸足を移しつつある。「金利のある世界」の到来も見据え、持続的な賃上げが可能な収益基盤を早期に築きたい。一方の中堅企業は、給与や従業員数の伸び率が大企業を上回る。政府は優遇税制や補助金により中堅企業への支援を強化する。中小企業へのM&A(合併・買収)によるグループ化も後押しする方針で、産業界の新陳代謝が進展すると期待したい。

中小企業の経営環境は厳しい。4月に実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済がピークを迎えるだけではない。人手不足が深刻な中、人材確保目的の「防衛的な賃上げ」を余儀なくされている。円滑な価格転嫁で賃上げ原資を確保することが求められるが、それだけでは不十分だ。金利のある世界となれば負担はさらに増す。抜本的な事業の再生を急ぎたい。

政府が中小企業支援の軸足を資金繰りから事業再生に移すのは適切だ。資金繰り支援は安易な“延命”になりかねない。政府は2030年代半ばまでに最低賃金を時給1500円(23年は1004円)に引き上げる目標を掲げており、中小企業は持続的な賃上げが求められる。金融機関が伴走し、中小の事業改善を側面支援してほしい。

政府は24年を中堅企業元年とし、支援を強化する。産業競争力強化法などの改正案を今国会で成立させ、従業員2000人以下の企業を「中堅企業」と法的に定義する。その上で、地方の雇用の受け皿である中堅企業を補助金・優遇税制で支援し、国内投資や地方での賃上げを促す。中小企業へのM&Aを後押しする優遇税制も適用される予定だ。中堅企業は中小企業へのM&Aにより労働移動の受け皿となり、産業全体の賃金を底上げする役割も担ってほしい。

日本経済は歴史的な転機を迎えつつある。中小企業をはじめ産業全体の稼ぐ力を引き上げ、経済の好循環を回し続けたい。

(2024/4/3 05:00)

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