(2024/5/30 05:00)
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場について、佐賀県玄海町が選定に向けた「文献調査」を受け入れると表明した。文献調査は北海道の2町村に続いて3例目。玄海町の脇山伸太郎町長は27日の日本記者クラブでの会見で「全国的に議論が高まる布石になれば」との考えを示した。岸田文雄政権は調査対象となる自治体が増えるよう国民的な議論を喚起し、最適な処分場選定への歩みを進めたい。
日本の商業原子力発電は、1966年7月に東海発電所(茨城県東海村)で始まった。以来58年経つが、核のゴミの最終処分場は定まっていない。原発再稼働で今後廃棄物は上積みされる。さらに第7次エネルギー基本計画の策定に向けた議論が始まり、原子力発電の増強が焦点になっている。原発はエネルギーの安定供給と脱炭素の視点から不可欠な電源であり、最終処分場の選定は避けて通れない。
核のゴミを地下300メートルより深い地層に埋める最終処分場の選定は、20年程度かけて3段階で行われる。地質データなどで評価する「文献調査」、ボーリングなどを行う「概要調査」、処理場に適しているかの最終調査「精密調査」から成る。文献調査から概要調査に移行するには知事の同意も必要になる。
だが、北海道と佐賀県の自治体が文献調査を受け入れたものの、両道県の知事はともに最終処分場の受け入れに反対姿勢を崩さない。地殻変動が活発な日本列島で、どの地域が最終処分場に適しているのか、当該地域の理解は得られるのか、岸田政権の難路が続く。原子力発電環境整備機構(NUMO)は、文献調査の対象となる自治体を公募し、全国の自治体を対象とした対話型説明会も行っている。こうした活動も粘り強く続けて活路を見いだしてほしい。
経団連は、生成人工知能(AI)の普及で電力消費の急増が見込まれる中、原発の最大限の活用を政府に要望している。岸田政権は最終処分場をめぐる国民的な議論を広げつつ、原発再稼働についても前面に立って地元理解を醸成してもらいたい。
(2024/5/30 05:00)
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