社説/骨太の方針(1)「成長型」経済への移行に期待

(2024/6/17 05:00)

政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を月内に閣議決定する。原案によると、日本は成長型経済を実現する「千載一遇のチャンス」を迎えているとし、成長分野への積極的な国内投資で“稼ぐ力”を引き上げることを求める。一方、人口減が本格化する2030年度までが経済構造改革への「ラストチャンス」と警鐘も鳴らす。この数年の官民の取り組みが日本経済の将来を左右すると受け止める必要がある。

「失われた30年」で凍り付いていた賃金、物価、金利が動き始めた。24年春季労使交渉(春闘)は33年ぶりの歴史的賃上げを実現し、日銀に17年ぶりの利上げを促した。2%の物価目標も視野に入る。この機を捉え、日本経済はコストカット型の縮小均衡から拡大均衡へと新たなステージに移行したい。

骨太の方針(原案)では、経済・財政・社会保障の持続可能性を確保するには、人口減が本格化する30年度以降も実質成長率1%を安定的に上回る必要があると指摘する。そのためには生産性の向上と稼ぐ力の強化により、賃上げを起点とする経済の好循環を回し続ける必要がある。脱炭素や経済安全保障、デジタル化といった社会課題の解決を成長につなげ、賃上げを定着させることが求められる。

政府は中堅・中小企業の価格転嫁や設備投資、販路開拓なども後押しするとしており、稼ぐ力が産業全体で底上げされると期待したい。人工知能(AI)や次世代半導体など、革新技術の社会実装も支援するという。着実な実行が求められる。

日本の低い潜在成長率は、企業による稼ぐ力の強化のほか、高齢者・女性の労働参加拡大や出生率向上で引き上げる。5日に成立した改正子ども・子育て支援法も定期的に効果を検証し、アップデートしてほしい。

政府は新たな経済ステージへの移行に向け「経済・財政新生計画」をまとめる。人口減が本格化する30年度までの6カ年計画になる。「金利のある世界」は国債費を膨張させるだけに、踏み込んだ中長期の財政健全化目標の策定も政府に求めたい。

(2024/6/17 05:00)

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