社説/骨太の方針(5)脱炭素電源で産業競争力強化を

(2024/6/21 05:00)

政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案に、原子力など脱炭素電源を最大限活用する方針を盛り込んだ。生成人工知能(AI)の普及で電力消費の急増が見込まれる中、脱炭素や自給率向上に資する電源の拡充を急ぎたい。ただ原子力発電所の再稼働は進まず、再生可能エネルギーも出力制御の問題を抱える。政府は2024年度中をめどに策定する第7次エネルギー基本計画で確かな道筋を示してほしい。

骨太方針の原案では、地元の理解を得た原子炉の再稼働や次世代革新炉の開発・建設、さらに廃炉を決定した原発の敷地内での建て替え(増設)の具体化を進めることを盛り込んだ。

だが現行の第6次エネルギー基本計画で、30年度に原子力20―22%、再生エネ36―38%を目指した電源構成は、22年度はそれぞれ5・5%、21・7%にとどまる。30年度の目標達成が危ぶまれる中、第7次エネ計画で35年度以降の目標をいかに打ち出すのかが大きな焦点になる。

経団連は「AI・ロボット大国」実現に向けた政府への提言で、原子力の最大限の活用が不可欠とした。生成AIの普及などで電力消費の急増が想定されるためだ。経済同友会も23年末に「縮・原発」方針を転換し、脱炭素やエネ需要を見据えて原発の再稼働や新増設を求める。

日本のエネルギー自給率は1割強に過ぎない。地政学リスクに対応し、貿易収支を改善して円安を是正するためにも自給率を向上させる必要がある。

ただ東京電力柏崎刈羽原子力発電所は再稼働に向けた地元同意の見通しが立たない。政府は原発30キロメートル圏外への避難路の整備を国の予算で行うなど防災対策を強化する。国が前面に立って地元理解も醸成してほしい。再生エネも、発電量と使用量を均衡させる出力制御を迫られ、電力を蓄えておく蓄電池の整備が欠かせない。政府は次世代蓄電池の開発のほか、曲がる太陽電池「ペロブスカイト」や浮体式洋上風力発電の社会実装も支援する。安価な電力を安定供給できる体制を整え、日本の産業競争力を引き上げていきたい。

(2024/6/21 05:00)

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