社説/円安を考える 成長投資で魅力ある日本市場に

(2024/6/28 05:00)

過度な円安に歯止めをかける手だてとは何か。円買い・ドル売りの為替介入は時間稼ぎに過ぎず、5%超に及ぶ日米の政策金利差を短期間で縮小することはできない。小手先の対策でなく、日本が抱える根本的な構造問題に取り組むことが肝要だ。日本を魅力ある市場に再生し、日本の“稼ぐ力”を意味する経常収支の構造を改善する必要がある。急がば回れの成長戦略を一段と推進し、円の購買力を引き上げることが求められる。

日本経済の長期停滞は、経常収支の構造変化で説明できる。日本は2000年代前半まで、輸出増による貿易黒字で経常黒字を増やしてきた。だが00年代後半には日本の海外生産が加速し、国内投資が停滞。海外拠点で得た利子・配当といった第1次所得収支の黒字が経常黒字を支える構造に大きく変化した。

日本企業が輸出で獲得したドルは円に換金されるため、為替相場は円高に傾く。一方、海外拠点で得た利益はドルのまま再投資されることが多い。経常収支が黒字でも円高になりにくい構造になった。背景には日本市場の魅力の乏しさがある。

国内市場を再生し、日本企業はもとより海外企業による日本への投資を増やしたい。日本企業は海外で得た利益を国内にも還流させ、先端半導体や次世代電池、経済安全保障などの成長・戦略分野に積極投資することが求められる。日本市場の魅力が高まれば外国企業の対日投資の増加が期待できる。日本企業が巨大IT企業に支払うクラウドサービス・ネット広告代により発生する「デジタル赤字」を補う投資を呼び込みたい。

輸入に依存するエネルギーの自給率向上も貿易・経常収支の黒字幅を増やし、円安の是正につながる。原子力と再生可能エネルギーの最大限の活用は、脱炭素との両立も可能にする。

日本経済は賃金も物価も金利も上昇する成長型経済に移行しつつある。歴史的な賃上げ率を起点に経済好循環を回し、成長投資の継続により円の購買力を引き上げる必要がある。生産性向上と技術革新への取り組みは円安への耐性も高めるはずだ。

(2024/6/28 05:00)

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