社説/中国の行方(中)統制強化より不動産対策を急げ

(2024/7/22 05:00)

中国共産党は18日、中長期の経済政策に関する声明を公表した。不動産不況や地方政府の財政難に必要な措置を講じ、先端技術も振興する方針を示した。だが焦点だった不動産対策の方向性は示されず、中国経済へのデフレ懸念が募る。一方で強調されたのが「国家の安全」だ。反スパイ法に象徴される統制を強化し、米国に対抗するサプライチェーン(供給網)も構築するとした。日本企業は引き続き中国との距離感が課題になる。

中国共産党の重要会議「第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)」が18日閉幕し、声明が公表された。中国独自の発展モデル「中国式現代化」を推進し、建国80年となる2029年までに改革を完成させるという。だが、不動産不況や地方政府の債務問題への施策が不透明であるほか、中国の民間企業の成長を支援するとしながら、その方向性も示されていない。

一方で、社会の安定維持に向けて「世論の誘導」を強化し、「国家の安全」を重視する方針が示された。国内総生産(GDP)の3割を占める不動産事業の対策には踏み込まず、むしろ経済発展より統制強化が強調されたように映ったのは残念だ。

民間企業の活性化が今後、促されるかも疑念が残る。習近平政権は格差是正を進め、国有企業を優遇する「国進民退」を推進していた。今回の3中全会でも国有企業重視の姿勢を崩しておらず、経済統制が大きく緩和されることは想定しにくい。

中国共産党は国家安全を重視し、反スパイ法は日本など外国企業のビジネス環境を引き続き脅かす。米欧が経済安全保障として講じる中国包囲網には、独自の供給網で対抗する方針を示しており、両陣営の対立が激化しかねない点に留意したい。

中国は不動産不況を発端に内需が不足し、現状は外需に期待する。だが欧州に続いて米国も8月に中国製品に追加関税を課すなど輸出環境は厳しくなる。中国は不動産不況への抜本的な対策を講じ、内需喚起を急ぎたい。中国経済の停滞は世界経済にも影響が及ぶだけに、これ以上の対応の遅れは許されない。

(2024/7/22 05:00)

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