(2024/7/30 05:00)
政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が2025年度に黒字化する可能性を試算し、29日に公表した。物価高や堅調な企業業績による税収増などを見込む。だが試算には補正予算の編成が考慮されておらず、実現するかは不透明だ。政府は26年度以降の財政健全化目標を示していない。「金利のある世界」は財政をさらに圧迫する。中長期の現実的な目標を早期に定めたい。
PBは、税収・税外収入と政策的な歳出との収支で、黒字なら借金に頼らずに歳出を賄えたことになる。黒字化を実現できれば、政府が02年にPB目標を掲げて以来、初めてのことだ。
政府の1月の試算では、25年度に実質成長率1・3%を達成しても黒字化しない見通しだった。それが一転、税収の上振れなどを見込んで黒字化の可能性に言及。財政健全化へ一歩前進したように映り、政府の歳出圧力が強まらないか注視したい。
政府の今回の試算はそもそも実現が容易ではない。半ば常態化している補正予算の影響を加味せず、25年度の成長率も実質1・2%、名目2・8%と想定し、民間予測より強気だ。
25年度にPB黒字化を実現できても、財政健全化への通過点に過ぎない。日本の債務残高の国内総生産(GDP)比率は2倍以上に達し、主要国で最悪の財政事情にある。財政への市場の信認を確保する上でも、健全化へ確かな歩みを進めたい。
経済成長だけでは、財政や社会保障の持続可能性を確保できない。全世代型社会保障の構築による歳出改革やEBPM(証拠に基づく政策立案)による歳出の徹底検証が欠かせない。政府は防衛費や少子化対策の恒久財源を確保できていない中、30年代初頭に少子化対策の予算倍増を掲げる。消費増税もタブー視せず議論を深めてほしい。
政府は、「金利のある世界」で国債費の負担増を懸念しながら、自民党の財政再建派と積極財政派に配慮して財政改革に踏み込まない。国民の将来不安を払拭するためにも、経済再生と財政健全化を両立する具体的な道筋を描いてもらいたい。
(2024/7/30 05:00)
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