(2024/8/5 05:00)
株価が急落している。歴史的円安を背景に過熱感が指摘されていた日本株が、円高進行で調整局面に入ったようだ。懸案だった円安の是正は輸入物価を抑え、経済好循環に資すると歓迎したい。ただ円高は企業の為替差益を目減りさせ、株安は資産効果を薄める悩ましい問題を伴う。株価上昇に向け、企業の稼ぐ力がこれまで以上に問われており、成長投資を推進することで株式市場から評価を得たい。
他方、円高・株安を招いた米国経済の先行き不安が懸念される。世界経済に影響を及ぼすだけに、金融緩和により軟着陸できるかを注視する必要がある。
先週末の2日、日経平均株価の終値は、前日終値より2216円も安い3万5909円。下落幅は過去2番目の大きさだった。4万2000円台の史上最高値を記録した7月11日からわずか3週間で、約6000円も下落してしまった。米国景気の先行き不安で米国株が下落し、円高が進んだことが、リスク回避の株売却を促したようだ。
日米金融当局の首脳が会見した7月末から為替は円高に振れていた。米国が9月の利下げ、日銀がさらなる利上げの可能性を示し、1日の外国為替市場は一時、1ドル=148円台まで円高が進行。2日に米製造業の業況悪化を示す指標が発表されると同146円台を付け、円高に歯止めがかからない状況だ。
米国は9、10、12月の年3回利下げに踏み切るとの見方が広がるほど、雇用情勢が懸念される。新規就業者数や失業率が軒並み悪化し、9月は通常の2倍に当たる0・5%の利下げ幅も指摘される。ただ米国の4―6月期の実質成長率は年率換算で2・8%、個人消費が前期比2・3%増と堅調だ。雇用と消費の行方が今後の焦点となろう。
日本企業は歴史的な円安で好業績を達成し、バブル期を超える株高を実現してきた。円安で割安感のある日本株に海外投資家も注目した。だが株式市場は円安の“ゲタ”を脱いだ実体経済を反映しつつある。成長型経済への移行に向けた成長戦略を加速し、円安をけん引役とする株価から質を転換させたい。
(2024/8/5 05:00)