(2024/8/7 05:00)
6月の実質賃金が27カ月ぶりに増加に転じた。賃上げ率が物価上昇率をようやく上回り、個人消費回復への環境が整いつつあると期待したい。ただ、7月の賞与を前倒しして支給した事業所などが増えた要因もあり、7月以降も増加が継続するかは注視する必要がある。5日に大暴落した日経平均株価は6日に急反発しており、株価下落で消費を控える逆資産効果も最小限にとどまると期待したい。
厚生労働省が6日に発表した6月の毎月勤労統計調査によると、労働者が実際に受け取る名目賃金(現金給与総額)は前年同月比4・5%増の49万8884円だった。同月の消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く)の上昇率は同3・3%で、名目賃金から物価変動の影響を差し引いた実質賃金は同1・1%増と27カ月ぶりに増加に転じた。
2024年春季労使交渉(春闘)での大幅な賃上げが反映されつつあり、節約志向の家計の消費が促される一歩となるのか今後の行方が注目される。実質賃金の本格的なプラス転換は今秋との見方が多く、これより早い7、8月も増加が継続するかが当面の大きな焦点になる。
日本経済は、賃金も物価も金利も上昇する成長型経済への過渡期にある。賃金の上昇が消費を促し、消費の拡大が企業収益の増加とさらなる賃上げを実現する経済好循環を早期に回したい。ただ為替相場の動向次第でこの流れに水を差しかねない。
為替は、緩やかに円高が進むシナリオが望ましい。円高は輸入物価を引き下げて実質賃金を拡大させる効果がある半面、急な円高進行は為替差損などを伴う可能性がある。日銀は円高が進んでいる局面では、利上げのタイミングを米国の利下げ時期より遅らせるなど、経済に配慮した政策運営が求められる。
米国が経済の軟着陸を実現できるかも大きな焦点になる。米国経済の減速は日本および世界経済に波及し、米大統領選にも影響する可能性がある。米連邦準備制度理事会(FRB)が9月の会合を待たずに緊急利下げに動くとの観測もある。米国は軟着陸へ万全を期してほしい。
(2024/8/7 05:00)
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