(2024/8/15 05:00)
岸田文雄首相は14日、9月の自民党総裁選に立候補しないことを表明した。岸田氏は総裁選任後、首相を退任する。自民党派閥の政治資金パーティー問題をめぐり、低下した国民の信頼を回復させるため自らが身を引き、自民党が変わる第一歩にするという。後任の総理・総裁は政治改革を前に進めるのはもとより、引き継がれたデフレからの完全脱却を図り、成長型経済への移行を実現してほしい。
岸田政権は、2021年10月の発足から3年で終止符を打つ。旧統一教会問題や政治資金問題で自民党不信が広がり、7月の都議会議員補欠選で自民党は2勝6敗と惨敗。25年に参院選と衆院選を控える中、内閣支持率は停滞を続け、「岸田おろし」がささやかれていた。唐突な不出馬表明だが、政治改革への重い決断と受け止めたい。
次期総理・総裁に引き継がれる課題は山積する。まずは改正政治資金規正法で残された検討事項を取りまとめ、国民の政治不信を拭う必要がある。政策活動費の支出をチェックする第三者機関の制度設計や、10年後に公開する領収書の対象範囲について、政治資金の透明化につながる対策を講じてもらいたい。
デフレからの完全脱却の課題も引き継ぐ。歴史的賃上げを起点に、賃金も物価も金利も上昇する成長型経済への移行を確実に実現することが求められる。
岸田政権はこの3年間、防衛費の大幅な増額、原発再稼働などのエネルギー政策の転換、少子化対策をまとめ、外交では日韓関係の改善や、核兵器の不使用継続を訴えた「ヒロシマ・アクション・プラン」なども取りまとめた。国際秩序が歴史的な分岐点を迎える中、防衛費の増額は日米安全保障の強化に資する。原子力の最大限の活用も、安定供給と脱炭素を両立させると評価したい。30年までが少子化反転のラストチャンスと捉えた判断自体は適切だった。
日米の両首脳が交代することになる。新たな日米首脳が、安保と経済の両面で日米関係をより強固にすると期待したい。
※「官と民の関わり方③」は20日に掲載します。
(2024/8/15 05:00)