(2024/9/2 17:00)
日向灘沖に長期孔内観測システム
海洋研究開発機構は南海トラフ地震観測のため、震源域と想定される高知沖に2026年度、日向灘沖に29年度、それぞれ長期孔内観測システム(LTBMS)の設置を計画する。29年度中に防災科学技術研究所の南海トラフ海底地震津波観測網(Nーnet)と接続し、リアルタイム観測を予定する。断層がきわめてゆっくり動くスロー地震の発生状況を高感度に捉えられるようになる。南海トラフ地震に関する臨時情報の効果的な発出に役立つ。巨大地震発生様式の解明も期待される。
地球深部探査船「ちきゅう」を活用し、高知沖と日向灘のそれぞれ1カ所で水深2000ー3000メートルの海底掘削孔内に設置する。光ファイバー歪計や孔内間隙(かんげき)水圧計を配備し、スロースリップや低周波微動などのスロー地震、微小地震から巨大地震までシームレスに観測できる。
スロー地震は巨大地震に影響を及ぼすとされるが、地震動が微弱で以前は観測が難しかった。東京大学地震研究所の小原一成教授は「スロー地震監視はプレート境界の固着状態のモニタリングに活用できると考えられる」としており、LTBMSによる高感度の連続観測が期待される。
海洋機構はこれまでに熊野灘、紀伊水道沖で同様のシステムを設置し、地震・津波観測監視システム(DONET)と接続。高感度かつリアルタイムに評価できたことで、南海トラフ沖合でスロースリップが繰り返し発生していることが初めて明らかになった。
一方、こうした現象は現行の海底地殻変動観測などでは観測が難しく、震源域沖合のプレート境界におけるスロースリップなどの発生状況はほとんどの地域で分かっていない。LTBMSにより、「その地域が通常どのような形で歪みを貯めているか明確となり、通常と異なる動きがあれば臨時情報発出の根拠とできる」(海洋機構の荒木英一郎上席研究員)。
(2024/9/2 17:00)
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