(2024/10/21 05:00)
中小企業への賃上げ圧力が強まっている。連合は2025年春季労使交渉(春闘)で大企業を上回る賃上げ率「6%以上」を目指し、石破茂政権は20年代に最低賃金(最賃)を時給「1500円」に引き上げる目標を掲げる。これらの高いハードルをクリアするには、労務費の増加分を適切に価格転嫁することが前提となり、親企業の対応が厳しく問われる。不公正な商慣習を是正する契機としたい。
連合は25年春闘で、高水準の賃上げ率維持と、大企業と中小企業の賃金格差是正を目指す。大企業の賃上げ率目標を5%以上、中小企業は6%以上とし、格差縮小を進めたい意向だ。一方の石破政権は、20年代の最終年度である29年度に時給1500円を目指す。25年度から毎年「89円」引き上げる必要があり、24年度に過去最高だった「51円」を大幅に上回る額を5年間継続しなければならない。
25年春闘方針や最低賃金の政府目標は、主要国に見劣りする賃金体系を引き上げ、長く続いた家計の節約志向を改善させる効果を期待できる。だが中小企業による賃上げの自助努力にも限界がある。賃上げ分を取引価格に上乗せする価格転嫁なしに高いハードルは越えられない。
政府は年内に下請法改正案をまとめる。親企業の「買いたたき」を厳しく取り締まり、円滑な価格転嫁につなげたい。経団連の十倉雅和会長は、「労務費を含む価格転嫁が重要との認識を、ソーシャルノルム(社会的規範)として普及させる必要がある」と指摘する。商慣習が大きく改善されると期待したい。
他方、政府は中小企業による成長投資やM&A(合併・買収)を促す施策を一段と推進し、収益基盤の強化を後押ししてもらいたい。企業価値が向上すれば、価格転嫁を求める中小企業の交渉力も高まるはずだ。
サントリーホールディングス(HD)が25年春闘で、ベースアップと定期昇給で7%程度の賃上げを目指すと表明した。連合の要求水準を上回る。中小企業の賃金底上げと同時に、大企業の意欲的な賃上げが定着するかも、注視する必要がある。
(2024/10/21 05:00)
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