(2024/10/30 12:00)
五和製作所(愛知県豊田市、安藤尚司社長)は、2024年夏、愛知県豊田市に新本社工場を稼働した。25年に二酸化炭素(CO2)排出量を19年度比で半減する目標を掲げており、新工場で活動を加速する。エンジンや内装などの自動車部品の塗装を手がける同社にとって塗装装置、乾燥炉から発生するCO2を抑えることが経営の優先事項。「そして環境負荷を低減する活動こそが当社の競争力の源泉になっている」と安藤社長は明かす。
五和製作所の主力事業はカチオン電着塗装だ。ハンガーなどの治具にセットされた部品が搬送機によって、処理液や塗装剤が入っている槽に浸されながら工程が進んでいく。仕上がった部品は黒光りしているのが特徴。防錆性能に優れ、均一に塗膜を形成するほか、塗料のムダが少ないなどのメリットから自動車部品には欠かせない技術となっている。
同社は傘下の九州工場(福岡県嘉麻市)、東北工場(岩手県奥州市)、米インディアナ工場、同ケンタッキー工場のマザー工場。カチオン電着塗装は部品の形状や大きさによって処理時間を変更するなどのノウハウがあるが、コストダウンに効くのは工場を稼働するエネルギー消費量の削減だ。「部品加工の単価アップが簡単ではない中、工場のエネルギーの使い方で利益を確保していく」(安藤社長)と方針は明確だ。
新工場はまず乾燥炉に使用していた蒸気ボイラを廃止し、乾燥の熱源を浸管バーナーに切り替えた。これによって乾燥炉における水の使用をなくして、ガスの使用量は半減した。バーナーから出る160度Cの廃熱は乾燥炉で再利用する。「導入コストはボイラと同じだが、ランニングコストに大きな開きが出た」と安藤社長は効果に満足する。
また作業場に90台設置していたスポットクーラーは全て冷風機に切り替えた。「消費電力は大幅に減少し、月間30万円程度軽減できた」(同)。25年11月には本社工場に500キロワットの太陽光発電システムを搭載する。稼働すれば電動フォークリフトの電源も含め、日中の工場の電気代は全て賄うことができる。
同社は24年、平均5%の賃上げを実施した。一部価格に上乗せできたものの十分ではない。円安などによってエネルギーコストは上昇した。「トヨタ生産方式(TPS)に基づく原価低減活動で競争力を高め、得意分野を伸ばしていくことで自動車業界を勝ち抜く」(同)。迫り来るカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)社会をフックにコスト競争力の強化に結び付ける。
(2024/10/30 12:00)
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