インタビュー/東邦アセチレン上席執行役員・室伏直也氏 定期修繕、若手の技能習得につなげる

(2024/10/30 12:00)

主に産業用ガスを手がける東邦アセチレンも製造現場の世代交代が進む。若手への技能承継は待ったなしだが、ここ数年の事業環境の変化で新たな課題も浮上している。生産・技術本部長を務める室伏直也上席執行役員は、間もなく始まる設備の定期修繕がその課題解決の一つになると指摘する。

―工場の主力である空気分離装置の操業条件が変化しているそうですね。

「電力を大量に消費するため、以前は料金の安い夜間に操業し昼間は止めていた。それが最近は昼に安価な太陽光発電が増え、昼夜間の価格差がなくなり、一日中稼働するようになった。毎日止めたり動かしたりを繰り返すと機械にもストレスがかかるので極力止めないようになっている」

―その結果、若手が技能を身に付ける機会が減るのですね。

「装置を止めたり動かしたりする機会がない。設備の定期修繕も以前は1年周期だったのを3年に延ばしている。次の定修が11月なので計算上、入社3年目までの若手はその経験をまだ積んでいないことになる。ただ、実を言うと5月に突然、装置が止まるトラブルが発生した。ベテランが適切に対処して事なきを得たが、若手は初めてのことだったので何も理解できていない様子だった」

―現場は大変だったでしょうが、若手には良い経験になったと。

「技能伝承のため手順書などをつくってあるが、やはり実機での経験がないと身に付かない。もう一つの教訓は『装置はなるべく止めない』ではなく『おかしな兆候を感じたら思い切って止める』ということ。急に止まってしまうよりは緊急でも意図的に止める方が結果として損失が少ない。止めた後に行う原因調査も、装置全体について理解する良い機会になる」

―完全に装置を止め、十分に時間をかけてメンテナンスを施す定修が最大の学びの場になるわけですね。

「11月中旬から約1カ月かけて行う。装置を止めたり動かしたりするだけでなく、中を開けて個々の部品まで分解点検する作業もある。3年に1回しかない貴重な機会。装置の中を見たことのない若手もおり、交代勤務もある中だが、極力現場に立ち会ってもらう」

(2024/10/30 12:00)

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