INUI、取鍋用保温ふた 高断熱・耐久性で交換コスト低減

(2024/10/30 12:00)

  • 循環経済の促進を目指して製品化した取鍋用保温ふた

耐火物製造のINUI(イヌイ、愛知県常滑市、大野耕蔵社長)は、サーキュラーエコノミー(循環経済)の視点から鋳造現場の課題解決を図る技術、製品開発を推進する。循環経済促進に必要な三つのアプローチのうち「長く使う」に着目して製品化した溶湯(溶けた金属)を運ぶ容器(取鍋)用保温ふたは、耐久性を高めて長寿命化したのが特徴。廃棄物削減やコスト低減の効果に注目し、大手鋳造メーカーから引き合い、受注が増えている。

同社は耐火物の下請け加工業として2006年に創業。11年に自社製品の開発に着手し、産学官連携による共同研究に積極的に取り組み、技術開発に生かしている。

溶湯を鋳型に流し入れる鋳込みに適した温度に維持するため、鋳造現場ではシート状の「セラミックファイバーブランケット」をふたとして使うことが多い。しかし、溶湯温度は1000度Cを超える高温とあって、頻繁な交換が必要になっている。

同社の取鍋用保温ふた「リフテクト・リド」は同ブランケットを特殊硬化剤に含浸後、裏面に自社開発の断熱コーティング剤を塗布してボード状に仕上げる。断熱性能が高く、同社の調べによると耐久性が約2倍と長寿命化した。サイズ600ミリ×900ミリメートル、厚さ50ミリメートルのボードで1枚当たり3万円から製作する。

別途製作する取っ手付きの治具にボードを取り付け、ふたの形状にして使う。カートリッジ方式でボードの取り付け、交換を行い「現場の作業性を損なわず、交換に手間をかけないことを意識した」(大野大輔取締役)。

発売は23年。24年に入り、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)専門部署からの問い合わせが目立って増えており「循環経済実現に向けた機運の高まりを実感している」(同)。

今後、産業界はサプライチェーン(供給網)全体を脱炭素化する「スコープ3」の達成が必至。「製品の長寿命化、リサイクルを切り口に二酸化炭素(CO2)削減に貢献する」(同)と製品開発を加速する。

(2024/10/30 12:00)

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