社説/総合経済対策(上)先端半導体の国産化支援に期待

(2024/11/13 05:00)

政府は月内にまとめる総合経済対策に、半導体・人工知能(AI)分野への支援策を盛り込む。2030年度までに10兆円以上の公的支援を行う新たな「枠組み」を設け、「計画的」に両分野を後押しする。公的支援の道筋を明確にすることで、半導体関連への民間投資を促す狙いだ。ただ、長期にわたり巨費を投じることになり、費用対効果が問われる。ラピダスによる次世代半導体の着実な事業化などにつなげていきたい。

政府は半導体・AI分野で、今後10年で50兆円超の官民投資を引き出す目標を掲げる。そのため公的支援の新たな枠組みを設け、これを呼び水に民間投資を促したい意向だ。政府保有株を裏付けに「つなぎ国債」を発行し、補助金を支給するほか、民間金融機関の融資への政府保証などを検討する。これまで半導体支援は補正予算による場当たり的対応だったが、計画的支援に見直すものと評価したい。

政府は6月に決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、半導体・AI支援は「必要な財源を確保」し「複数年度にわたり大規模かつ計画的に行う」としていた。

政府は21―23年度の3年で、すでにラピダスや台湾積体電路製造(TSMC)熊本工場などに計4兆円の半導体支援予算を措置している。中でもラピダスは、これまでに9200億円の公的支援を決め、次世代半導体の量産には総額で5兆円が必要という。27年の量産化を目指す回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)半導体は、TSMCやサムスン電子も計画している。ラピダスは米IBMと共同で競争力のある量産技術を確立し、厳しい国際競争に臨みたい。

次世代半導体の国産化は、人工知能(AI)や自動運転などの成長分野を支える。ラピダスの事業化は、ラストチャンスとされる日本の半導体復権にもつながる。他方、先端半導体の9割をTSMCが製造しており、台湾有事に備えた経済安全保障上の対策も講じておく必要がある。政府の巨額の公的支援を足がかりに、“日の丸半導体”は確かな成果を上げてほしい。

(2024/11/13 05:00)

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