(2024/12/2 12:00)
タンケンシールセーコウ(東京都大田区、和田正人社長)は、多孔質(ポーラス)カーボン素材を活用した搬送用ロールで、高精細フィルムの非接触搬送を実現した。一般的な金属やゴム製のロールと比較して摩擦による傷やシワが付きにくい。光学系フィルムの製造ラインに採用実績があるほか、成長産業のペロブスカイト太陽電池向けでも引き合いがあるという。日本国内のほか中国や韓国を中心に採用を広げる。
多孔質カーボン素材の搬送用ロール「エアベアリングロール」を活用。数マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の無数の気孔から空気を送りながら吸引することでフィルムとロールの間に強固な流体膜をつくり、ロールに非接触の状態でフィルムを搬送する。プラスマイナス5マイクロメートルの精度でたわみやうねりを防ぐ。「フィルムの高精細化に伴い、いかに傷を付けないかの要求が高まっている」(羽鳥暢崇PCP事業部事業部長)とし、歩留まり向上にも寄与する。
ロールを回転させずに搬送できるため、ベアリングが摩耗せず高い耐久性を維持する。機械加工で金属に穴開けしたエアベアリングでは気孔が大きく、ブロワーで大流量の空気を送る必要があったが、「ポーラス素材のロールは工場にある既存のエアコンプレッサーで対応できる」(同)。従来の搬送用ロールと交換するのみで導入しやすいのも利点だ。
ロールの口径は75ミリ―150ミリメートル、面長は100ミリ―2500ミリメートルに対応する。辰野工場(長野県辰野町)で製造しており、今後生産能力の増強や自動化による生産性の向上などに取り組む。
同社はメカニカルシールの専業メーカー。摺動(しゅうどう)材の主要部材であるカーボンの材料開発の強みを生かして多孔質カーボン材の製品開発を手がけてきた。これまでにシリコンウエハーの吸着板や薄型ディスプレー(FPD)の露光、検査用のガラス吸着板に採用されてきた。
2023年に半導体洗浄装置向けフッ素樹脂継ぎ手メーカーのPILLARの傘下に入った。親会社の販売網も活用して販路を拡大し、多孔質カーボン製品の売上高を28年度に現状比2倍以上に引き上げる計画だ。
(2024/12/2 12:00)
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