(2024/12/16 05:00)
公正取引委員会と経済産業省・中小企業庁は、下請法改正に向けた報告書を週内にもまとめる。下請け企業が、労務費や原材料価格の上昇分を取引価格に上乗せする「価格転嫁」を後押しする対策を盛り込む。中小企業の収益構造が強化され、賃上げ原資の確保につながると期待される。雇用の7割を占める中小企業の賃金の底上げを、経済再生に向けた起点としたい。
公取委と企業庁は7月に有識者会議を設置し、下請法改正への議論を進めてきた。改正案は2025年通常国会での可決・成立を目指しており、取引適正化への環境が整いつつある。
下請法は、違反すると公取委による勧告や指導、さらに罰金や下請代金の減額分の返還を求められる場合がある。改正案は下請法の適用基準を拡大することで、親企業の「下請法逃れ」を防ぐことが柱の一つになる。
現行法では、親企業と下請け企業の資本金によって、下請法に適用されるかが決まる。だが親企業が下請け企業に増資を迫り、適用を逃れる場合がある。改正案は親企業と下請け企業の従業員数を適用基準に加える。製造業の場合は従業員300人超の親企業と300人以下の下請け企業に適用され、抜け道がふさがれる効果に期待したい。
親企業が一方的に取引価格を決める行為を禁止するほか、荷主と運送事業者も下請法の対象に加える。下請法の対象となる取引で約束手形を禁止し、親企業の差別意識につながる「下請け」という法律上の名称変更も報告書に示される見通しだ。
これらの施策により中小企業の収益基盤が強化されれば、さらなる賃上げや高付加価値化に向けた成長投資も期待される。
下請け企業はコスト上昇分の半分程度しか価格転嫁できておらず、全く転嫁できていない企業も2割ある。一方で連合は25年春季労使交渉(春闘)で中小企業に6%以上の賃上げ率を求め、石破茂政権は最低賃金を20年代に時給1500円に上げる高い目標を掲げる。サプライチェーン(供給網)の“果実”を中小企業にも適切に分配し、日本経済の活力を取り戻したい。
(2024/12/16 05:00)
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