(2015/10/6 05:00)
スウェーデンのカロリンスカ医科大学(ストックホルム)は5日、2015年のノーベル生理学医学賞を、北里大学の大村智特別栄誉教授(80)、米ドリュー大学のウィリアム・C・キャンベル名誉リサーチフェロー、中国中医科学院のトゥー・ユーユー教授の3氏に授与すると発表した。大村氏の受賞業績は「寄生虫によって引き起こされる感染の治療法に関する発見」。(総合2・深層断面に関連記事)
日本人のノーベル生理学医学賞は12年の山中伸弥京都大学教授に続くもの。
授賞式は12月10日にストックホルムで行う。賞金800万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)を3氏で分け合う。
大村氏は、静岡県内の土壌から採取された放線菌が生み出す抗生物質「エバーメクチン」を発見。キャンベル氏が当時勤務した大手製薬会社メルクとの共同研究により、この物質に基づき寄生虫を駆除する抗生物質「イベルメクチン」を開発した。当初、牛や豚の治療薬として販売したが、ヒトにも効果があることがわかり、世界保健機関(WHO)によるアフリカの熱帯病撲滅のために利用された。大村氏はエバーメクチン以外にも、抗がん剤の研究開発などに使われるスタウロスポリンなど約500種に上る有機化合物を発見した。
【略歴】おおむら・さとし 63年(昭38)東京理科大学大学院理学研究科修士修了、同年山梨大助手。68年北里大助教授、75年同大教授、90年北里研究所所長、07年北里大名誉教授、13年同大特別栄誉教授。日本学士院賞、藤原賞など受賞多数。文化功労者。薬学博士、理学博士。山梨県出身。
【中国国内の研究者・トゥー氏初の医学賞】
トゥー氏は、漢方薬に使われる薬草の成分からマラリア治療に有効な化合物「アルテミシニン」を発見した。マラリアによる死亡率の大幅な低下に貢献した。
中国国内の研究者がノーベル賞の自然科学3賞を受賞するのは初めて。
【略歴】ウィリアム・C・キャンベル氏 52年アイルランド・ダブリン大学トリニティ・カレッジ卒。57年米・ウィスコンシン大学で博士号取得。同年から米メルク研究所。現在、米・ドリュー大学名誉リサーチフェロー。30年アイルランド生まれ。
トゥー・ユーユー氏 55年北京医科大学薬学部卒。65年中国中医科学院助教、79年准教授、85年教授。00年チーフ・プロフェッサー。30年中国生まれ。
(2015/10/6 05:00)