[ オピニオン ]
(2015/12/25 05:00)
2016年度予算の政府案は税収増の追い風を受け、公債依存度が35・6%と8年ぶりの低水準になるなど財政規律の回復が目立つ内容となった。その半面、モノのインターネット(IoT)やロボットの高度化など「新・産業革命」とも呼ばれるモノづくりの激変に立ち向かう施策が小粒にとどまった感をぬぐえない。
財政再建に向けた当局の努力は評価できる。社会保障関係費の増加を抑えるとともに、従来は難しかった義務教育関連予算の圧縮にも切り込んだ。一方で防衛関係費と経済協力費が比較的、高い伸びを示したのは対外関係を重視する安倍晋三政権の特徴が出たといえる。ただ全体的には、政策的経費である一般歳出の伸びを0・8%にとどめ、抑制の効いた仕上がりとなった。
やや残念だったのは、世界的な「新・産業革命」の潮流に対し、政府が主導的な役割を果たす姿が見えにくかったことだ。いくつかの新政策はあったものの、環太平洋連携協定(TPP)対策の農業施策の充実に比べて、産業政策は目立たなかった。中小企業対策費は経済産業省所管分に限ればなんとか横ばいを維持したが、物価上昇を考えれば実質減だろう。
当局が16年度予算案で財政規律の改善を前面に出せたのは、ほぼ同時に策定した追加歳出3・5兆円規模の15年度補正予算があったからだ。補正全体では年金生活者への臨時給付金などが目立つが、中小企業向けの投資促進補助金など新たな施策も盛り込まれている。16年度予算と並行して成果を上げることを期待したい。
世界経済には先行きの不透明感が漂うものの、足元の企業業績は堅調だ。16年度予算の税収は57・6兆円と15年度当初比3・1兆円の増加を見込むが、政府経済見通しが順調に推移すれば、さらなる税収増も見込めよう。
財政再建はむろん重要だが、税収増の一部を”攻め“の産業投資に回すことで、経済の好循環を加速する施策も必要だ。政府には、日本のモノづくりの革新をリードするような産業政策の立案をお願いしたい。
(2015/12/25 05:00)
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