[ オピニオン ]
(2016/5/9 05:00)
人工知能(AI)を積んだ介護ロボットがミスをした。「間違えちゃってごめんなさい」とちゃめっ気たっぷりにロボットが謝ると、介護されていた高齢者が「仕方ないなぁ」と返す。社会学者が描く未来予想図の一幕。こうしたやりとりを通じて両者は心を通わせていく▼「ファジー」という言葉がブームになった時代がある。人間の思考や行動の曖昧さを取り入れたファジー技術は、1980年代に地下鉄やエレベーターの運転制御に応用された。90年代には「ファジー家電」が人気を呼んだ▼AIが台頭するにつれて、かつてのファジーの価値が見直されている。倒れにくいロボットの開発や、自動運転車のコントロールに応用するといった具合だ▼「空を飛ぶ」という目的をAIに与えたとする。賢いハードのAIが「飛行する装置」の製造に取り組むのに対し、ファジーを導入したソフトなAIは「鳥の羽ばたき」の再現を目指す。同じ知能の開発でも、これだけアプローチは違う▼ロボットは常に完璧ではなく、たまには間違えても、多少わがままな存在であってもよい。賢いだけでなく、時には人間のように振る舞うことが、より長く人間に愛されるロボットを生むのではないだろうか。
(2016/5/9 05:00)