[ オピニオン ]
(2016/5/18 05:00)
「軽自動車は利幅が小さい。だから決してマケてとは言わないで」というのは、スズキ会長の鈴木修さんの講演会での常套句(じょうとうく)。車両価格も税金も安く低燃費。“ゲタ代わり”の手軽さと経済性が軽の魅力だ。
しかし最近は車両価格が150万円を超すモデルも少なくない。燃費競争ではハイブリッド車が台頭。優遇税制も今春の増税で恩恵が薄れた。一方で室内空間の広さやパワーは向上し、軽に対する消費者の評価も変化している。
小型車との境界線が薄れる中、軽を取り巻く環境は大きな転換期を迎えた。トヨタ自動車は8月にダイハツ工業を子会社化。燃費不正が露見した三菱自動車は日産自動車の傘下に入る。
鈴木さんは昨年、全国の販売店を行脚した。耳に届いたのは「軽が秋葉原(家電店)で売られている」というウワサ。「このままでは(安売りに苦しむ)白物家電の二の舞になる」と“ミスターK”は警鐘を鳴らす。
国民車構想から生まれた軽の規格は日本ローカルだが、小さくて低コストな車づくりは新興国戦略に通じる。それこそが各社が”もうからない軽“の取り込みに血眼になる真意。近年の国内の不毛なシェア争いに終止符を打ち、軽が新興国の覇権争いの主役になる日は来るか。
(2016/5/18 05:00)