[ オピニオン ]
(2016/6/6 05:00)
「安倍さん(晋三首相)は、よほどやりたくなかったんでしょうなぁ」―。政界事情に詳しい財界人が、そう解説してくれた。
産業界の大半の反対にもかかわらず、消費増税の再延期を決断した首相。発表の翌朝、財界首脳に電話して理解を求めたという。「極めて重い政治決断を尊重する」という経団連会長の榊原定征さんの談話には、ある種の諦めがにじむ。
どんな政権にしろ、今の日本の置かれた状況では消費税を上げるしかないというのが経営者の合理的な判断だ。しかし「安倍さんにとって、あれ(消費増税)は他人が決めた政策。1度は我慢してちゃんとやったのだから、2度は勘弁してくれという思いがある」と冒頭の財界人。
つまり自らの“わがまま”を通したのであり、理屈ではない。そう考えれば、政権内部から首相をたしなめるように出た再延長反対論の背景も、この間、財務省が妙に静かだったことも、なんとなく分かる気がする。
首相には政治家として実現したい夢が他にあり、増税を後回しにしたのだろう。それは経済最優先からの路線転換ではないか。首相の思い描く「日本再興」は、産業界と同床異夢なのか。もしそうなら、産業界もいつか愛想を尽かすことになる。
(2016/6/6 05:00)