[ オピニオン ]
(2016/6/7 05:00)
労働界に異変が起きている。住友化学や三井化学、昭和電工など大手化学メーカーの労働組合で構成する産業別組合、全国化学労働組合総連合(化学総連)が連合から離脱した。産別組織全体が集団離脱するのは、1989年の連合結成以来初めてのケースだ。7月10日投開票の参院選を目前にした有力産別の離脱は、過去最多の組織内候補12人を擁立する連合と支持率低下に悩む民進党にショックを与えている。
化学総連の組合員数は約4万6500人。労使協調路線を取る産別として知られる。離脱の背景には、連合が支持する民進党が、共産党と選挙協力に踏み切ったことへの反発があるとみられる。「独自の組織として政策提言したい」として連合に離脱を通告していた。
連合は説得を重ねたものの、先ごろの中央委員会で正式に離脱を報告した。民進党への選挙協力を約束した神津里季生会長は「非常に残念。遺憾としか言いようがない」と語ったが、ナショナルセンターとしての連合の求心力が問われる事態となっている。
連合の問題とは別に懸念されるのは、労働界内部の路線対立が石油化学コンビナートなどの現場の混乱につながることである。化学総連は、産業政策や春闘などで連合との窓口となっていた日本化学エネルギー産業労働組合連合会(JEC連合)との連携も解消した。
日本の石油化学コンビナートは、エチレンセンターを中心に多数のメーカーが集まり、結束して原料から製品までを一貫製造している。化学総連と協力関係にあったJEC連合には、JXエネルギー労組や東ソー労組、三菱ガス化学労組などが加盟している。
コンビナートで働く化学総連傘下の地方組織の中には、連合離脱に反対した労働者も少なくないという。現場を動かし、安全を支えるのは第一線の従業員だ。化学総連が独自路線をとる中で、ささいな対立が混乱につながってはいけない。現場の結束が揺らぐことのないよう、各社に十分な配慮を求める。
(2016/6/7 05:00)