[ オピニオン ]
(2016/8/15 05:00)
九州経済調査協会(福岡市中央区)が設立70年の節目を迎えた。記念セミナーなどを開催するとともに、30年後の九州のあり方について数年がかりでまとめる。
初代理事長の松岡瑞雄氏は、旧南満州鉄道の調査部出身。他にも九経調設立には多数の満鉄OBが関わった。満鉄調査部は日本における草分けかつ最高のシンクタンクと称され、満鉄設立の翌年、1907年に産声を上げた。
帝国主義時代の日本が中国東北部に建国した満州国は、かいらい国家であると同時に先進的な社会実験の場でもあった。その一翼を担った満鉄は調査部や日本の広報活動のルーツとされる「弘報係」を置いた。
九経調が生まれた1946年は戦後の混乱期。61年の九州経済連合会の発足より15年も早い。こんな時期に、シンクタンクという発想があったのは驚異的ですらある。
設立趣意書も興味深い。「調査の不備と統計の貧困が敗戦を招いた」として「国民経済の科学的究明による正しい判断」の必要を説き、同時に「九州人が九州を正しく理解すること」が郷土建設の第一歩とする。志の高さを感じさせられる。”シンクタンク冬の時代”といわれて久しいが、こうした過去を思い、未来を展望することには意味がある。
(2016/8/15 05:00)